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オンラインのみで契約可能? 不動産のネット取引解禁で不動産投資はどうなるか

2014.10.7|コラム

20141007

実現に向けて進められつつあるネットのみでの不動産取引。良い部分悪い部分あると思いますが、今やネットで何でも買える時代。時間はかかるかもしれませんが、不動産のネット取引が可能になるのも時間の問題でしょう。これは不動産投資に関してはどういった意味を持つのでしょうか。

大衆薬の次は不動産取引で 白熱するネット解禁論争

今年6月の改正薬事法の施行により、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売が解禁されて約3カ月。ネット取引をめぐる争いは大衆薬から不動産へと舞台を移し、ネット解禁派と反対派による対立が白熱しつつある。

 

楽天三木谷氏(新経済連盟)VS 不動産業界の構図

まるで、かつての政治の世界で話題になった、新興勢力と抵抗勢力の議論のような構図ですね。そもそも争点は何でしょうか。

 

まずは、公開されている新経済連盟が作成した資料を確認しましょう。

不動産のインターネット取引の実現に必要な規制改革(PDF)

一般社団法人新経済連盟(略称:新経連/ JANE)(2013年11月14日)


ネットで不動産取引契約が完結しない問題点
↓↓↓↓↓↓
「契約の前に、対面で、書面を交付して、重要事項説明を行う必要がある。」
(※宅建業法35条について、電話での問合せに対する国交省の回答。)

  1. 法令上、「対面」を明示的に義務付けていないにも関わらず、対面が必要と解釈している。
  2. また、同法37条で「書面の交付」が義務付けられており、電磁的な方法が認められていない。

不動産取引のネット解禁の是非については、主に重要事項説明書の説明をテレビ電話等を利用し「対面」ではない手段で行うことを認めるかどうか、及び、契約書類を書面(紙)で交付せずPDFファイル等電磁的な方法で代替することを認めるかということが争点になっています。

 

本件については、10月3日付で、これまでの対立の構図と今後の新たな動きについて簡潔にまとめられた報道がなされています。

不動産のネット取引を解禁へ TV電話で重要事項説明

楽天の三木谷浩史会長兼社長が代表理事を務める新経済連盟などが国交省に実現を働きかける一方、消費者団体は「手法を簡略化すると消費者にとって不利益が生じる可能性がある」と反対してきた。対面でも説明がうまく伝わらず、敷金を巡るトラブルなどにつながる場合があったという。

同日付の朝日新聞の紙面によりますと、国交省は賃貸の契約と、法人同士の売買契約に限ってテレビ電話の利用を認める方針とのことです。早ければ来年度から1~2年の期限付きで試験的に導入し、問題がないか見極めるということです。詳細については、有識者を集めて今後検討することになるでしょう。利便性と他業界の事例を鑑みると、不動産のネット取引解禁は時間の問題でしょう。

 

不動産のネット取引解禁で現場で起こりうるトラブル

では、実際にネット取引が解禁された場合に現場で起こりうるトラブルはどのようなことが想定されるでしょうか。いくつか挙げられるのですが、多くの方々が指摘しているトラブルは宅建主任者のなりすましの問題です。重要事項説明書を説明してくれているはずの人間が、詐欺師、あるいはそれに類する人間であれば、不動産ネット取引の安全性が担保されないことになります。

参考までに、前述の新経連の資料によりますと、宅建主任者のなりすまし対策については、次の通り記載されています。

 

【なりすまし対策】

  • 宅建主任者のデータベース(DB)を設置し、公開。宅建業者のホームページに勤務する宅建主任者証を掲載(DBとリンク)
  • 勤務状況をリアルタイムに表示
  • 説明を行った者の氏名、資格番号を通知する

これらの対策が全ての不動産業者において実務的に可能かどうかについては少々疑問です。なりすましの問題は本件に限らずネット社会に存在する問題でもありますので、今後の動向を見守りたいと思います。

その他想定される問題としては、

  • 二重売買による手付金等の詐欺問題
  • 二重売買後、海外在住者(外国人を含む)等、遠隔地在住の善意の第三者にネット取引のみで転売されてしまうリスクの問題
  • ネットバンキングのセキュリティ面での脆弱さが顕在化している現在、高額な不動産売買に伴う手付金等の支払いがネットバンキングで行われる場合の不正な送金リスクの問題

 

などが挙げられるでしょう。

意外に見落としがちなのが、不動産オーナー、借主・買主が支払うことになる仲介手数料に関するトラブルではないでしょうか? ネット取引が解禁されると、ローコストで運営可能なネット専業不動産会社が続々と立ち上がることが予測されます。

不動産オーナー、借主・買主が、ネット専業不動産会社を通じて売買や賃貸すると、成約した場合には取引価格の数パーセントの成約報酬を不動産会社に支払うことになりますが、それは広告料でしょうか、それとも宅建業法で定められている報酬に該当するのでしょうか。 不動産オーナー、借主・買主にとっては、成約報酬の支払いが少なくてすむのであれば、どちらでもよいかもしれません。が、

 

そうなると従来の不動産業者にとっては大変な問題が発生します!

 

長い間、不動産業界で既得権益のように守られてきた仲介手数料の相場がぐっと下がってしまうかもしれません。東京都心の不動産が数百万円の時代に定められた仲介手数料の規定が、今の時代にも引き継がれてきています。仮に100億円のビルの売買であっても、不動産業者は規定の率を上限とした仲介手数料(例:3億円+6万円+消費税相当額)を請求できる権利を持っています。ところが、取引数重視で薄利多売のネット専業会社が立ち上がると、この仲介手数料に関する価格破壊が起きてしまうでしょう。

実は、不動産のネット取引を解禁するかどうかの意見の対立の本質は、この一点にあると思います。従来の仲介手数料を得ることができなくなるばかりか、ネット取引による接客からクロージングに対応できない不動産業者の多くは、廃業に追い込まれる可能性さえあります。

 

またネット取引が解禁された場合、今でも問題が頻発する「業者を抜く」問題が益々多くなるでしょう。ネット専業業者との比較により、成約に至る前に報酬額について揉めるだけでなく、成約後にその報酬を払う、払わないといった大きな問題がさらに輪をかけて発生する可能性が高いです。

 

一戸建てやマンションを購入しようとする場合、物件価格を準備すれば購入できると思っている人が結構います。別途かかる登記や火災保険費用までは仕方なく払うとしても、仲介手数料がかかることを伝えると本当に驚く方がいるのです。せっかく気に入った物件でも、別途仲介手数料がかかることを後付けで知り、お金が足りない。。。このような場合、仲介手数料が1/3で済む他の業者があれば、そちらのお店(ネット専業業者)から買いたくなりますよね。仮に3000万円の家とした場合、仲介手数料が約90万円かかりますが、30万円で済んでしまいます。

そう考えると、商談を開始した仲介手数料が3%の業者には体良く断り、より仲介手数料が安いネット専業業者に問い合わせることは普通に起こりえます。

また売買契約に至り、住宅ローン審査が無事通り、融資条件で定められた白紙撤回期限を過ぎた後、残金決済の直前になって同じ物件を扱うネット専業業者の報酬額の低さを知ると、そこから仲介手数料の値下げ交渉が発生する可能性もあります。場合によっては、仲介手数料を値下げしないなら買わないと感情的になり解約申し入れをしてしまい、融資条件の期限後の解約ということで売主側から売買価格の20%程度(例:3000万円の物件の場合は違約金600万円)の高額な違約金を請求されるという金銭トラブルや訴訟が発生する可能性もあります。違約金の説明は、現在の対面方式でもずさんな説明しかなされていない場合があるので、ネット取引ではなおさら心配です。

 

このように、不動産のネット取引の解禁によって、不動産業界における仲介手数料の価格破壊、仲介手数料を取り巻く金銭トラブル、訴訟の問題は必ず起こると思います。

 

幸いなことに、私たちのお客様の大半は社会的信用を重んじる中小企業の経営者か、それなりに資産をお持ちの投資家ですので、仲介手数料の額や、払う、払わないということで揉めることはありません。しかし、稀にご相談いただくレベルですが、個人の方から仲介手数料を支払う約定書に署名、捺印していただいても、決済直前に値切り交渉をされることもあります(笑)。それだけ、個人の方にとって、仲介手数料は本音を言えば払いたくないものなのです。

 

不動産投資で考えるとアリかナシか

賃貸契約の場合、契約締結の直前に重要事項説明が短時間で行われることが多いです。そのため、専門用語が多く含まれている重要事項説明書に関する説明が十分なされているとは限りません。仮に重要事項説明書による事前説明に疑問を持ったとしても、契約できなくなり引っ越し先を失う危険性を考えると、その時点で契約を止める方は少ないと思います。

一方、不動産投資の契約の場合、契約締結前に数回、重要事項説明書と契約書類(膨大な付属書類を含む)の検討時間を取ることが一般的になっています。全ての不動産業者というわけではありませんが、取引後の訴訟問題を鑑みると、細かい業務を丁寧に行う必要性に迫られているからです。

ですから不動産投資の契約の場合、ネット取引が解禁されたからといって、重要事項説明書等に関する説明行為が簡素化されるわけでもなく、かえって説明手段の選択肢が広がるというメリットがあるでしょう。

ちなみに私たちは、物件情報のやりとり等、不動産投資にまつわる行為の大半は電子メールにより行っています。ビデオチャットによる事前説明についても、お客様側さえ問題なければ、私たち自身は問題ないと思っています。

ですから、仮に海外等遠隔地にお住まいの不動産投資家と情報交換を行うとした場合でも、地理的問題は既に解消しているといってもよいでしょう。

結局、不動産のネット取引の解禁により不動産投資そのものにもたらされるメリットとしては、なりすましや不正送金等、セキュリティ面の問題はあるものの、遠隔地の投資家と不動産業者間とのコミュニケーション手段がより充実するということになります。ネット取引が本格化してくると、携帯端末を活用したビデオチャットやネット技術により、遠隔地に滞在しながら物件やその周辺環境を詳細にかつリアルタイムに閲覧できるサービスもどんどん充実し、今より不動産投資市場も活発になるかもしれません。

 

近い将来の仲介手数料の価格破壊については、避けて通ることは出来ないのではないでしょうか。不動産のネット取引解禁後は、他にあまり出回らない価値ある不動産売買情報や買主情報を提供してくれる不動産エージェントの腕に対して、仲介手数料の値段がついてくる時代になると思います。

高額な報酬をもらう側の不動産業者、エージェントは、投資家が望む希少な情報やノウハウ(高額で売却できる方法/安く購入できる方法/好条件の融資を引き出す方法等)に関する知識と経験、そして何より信頼が求められます。そう考えると、いちサービス業として、お客様の支援のために必要不可欠な事や物は何なのかを真剣に考え、実行する必要がより大きくなるでしょう。