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相続税対策の為の不動産投資で貧しくなる人

2014.10.22|コラム

20141022

2015年からの相続税増税の報道が多くなってきています。過払い金回収ビジネスに続けとばかり、相続税の還付ビジネスでバブルを期待する専門家の話すら聞こえてきます。相続税対策で安易にアパートなどを建てて大丈夫なのでしょうか。

 

相続税問題、それなりの資産を持っている方にとっては大問題です!

そうでない方にとっては、相続税を支払う必要に迫られる可能性が低いのでさらっと聞き流す程度の話題です。

 

そもそも、相続税を納付すべき人の割合や税額はどのくらいなのでしょうか。参考になるデータが国税庁から公表されています。

平成24年度分の相続税の申告の状況について(PDF)

  • 被相続人数(死亡者数):約126万人
  • 相続税の課税対象となった被相続人数:約5万2千人(課税割合は4.2%)
  • 相続税額:被相続人1人当たりでは2,388万円
  • 相続財産の金額の構成比:土地45.9%/現金・預貯金等25.4%/有価証券12.3%

すなわち、被相続人に対して相続税が課税される割合は、4.2%(約100人に4人)となります。ほとんどの人が関係ないですね。しかし下記にあるように2015年以降、その割合は首都圏では倍増するのではないかと予測されているようです。

 相続税の課税対象者、首都圏でほぼ倍増 15年税制改正

首都圏で相続税の課税対象者が2015年の税制改正でほぼ倍増になる見通しだ。同年1月から相続税の基礎控除額が引き下げられるためだ。不動産に相続税がかかるケースは高級住宅地が目立ったが、法改正後は首都圏郊外も多くの地域が対象となる。相続税への関心が幅広い層で高まっている。

このような背景の下、不動産業界でもさまざまな新しいサービスが提供され始めました。例えば、大手企業の三井のリハウス(三井不動産リアルティ)は、次の新しいサービスを開始しました。

「三井のリハウス」住まいの安心サポート 新メニュー「相続税つなぎ融資」開始

 

相続税対策「所有する土地にアパート、マンションを建築」には大問題あり

相続税対策と不動産といえば、借金をして所有する土地にアパート、マンション(以下「アパ/マン」)一棟を建てて相続対策する人が多いです。借金をして相続財産を実質的に減らすことと、建物を建てて土地の相続税評価を下げることが主な目的です。

建設会社の営業担当は、こぞって地主さんにローラー営業をして、

「相続税対策としてアパ/マンを建てましょう!」

「30年間の家賃保証をしますので、お金がずっと安定して入りますよ!」

「管理は私たちのグループ会社がバッチリしますから手間入らずです!」

とセールスしています。

 

全ての場合がそうだとはいいませんが、このセールスには下記のような問題点がよく言われています。

  1. 建築コストが高すぎる
  2. 最寄駅から遠くて将来の空きリスクが高いのにアパ/マン建築を勧める
  3. 30年間の家賃保証を本当にできるのか疑問
  4. 途中で家賃の大幅値下げや、家賃保証契約の解除の例が多々ある
  5. 建物が古くなった時のメンテナンス費用が別途かかることの説明が不十分
  6. 30年の間に設備や間取りが全くの時代遅れになるリスクの説明がなされない
  7. 建物の管理をグループ会社で委託するのが建築条件で、かつ管理費用が高い

日本では持ち家比率アップ&総人口ダウンが始まっています。今後、居住用アパ/マンを建築しても、将来的に空室率がアップするのは明らかなのですが、リスクを考えずにとりあえず不動産投資に走る方が結構いるのです。中には、不動産のノウハウがないのに本業を捨てて、不動産事業を本気で目指す人もいます。「不動産屋にできるんだったら、おれでも出来るよ!」と不動産免許を取得しようとする人までいるのです。毎週、競売物件が大量に出ている状況です。実際そんなに簡単なことではないんですよ。

 

安易な気持ちで不動産投資を始めて、本当に大丈夫でしょうか?

 

不動産経営のノウハウを持たない人が多額の借金をして、長年にわたり事業経営をすることは危険すぎます。

と、こんな記事を書いている私ですが、知り合いから、

「相続した土地を売るのが良いか、借金をしてアパートを建てる方が良いのか、どうしたらいい?」

という相談を受けてしまいました(笑)。

どうやら、皆さんもよく知っている超大手企業から、立派なアパートを建築して相続税対策と不動産大家さんの一石二鳥を実現しましょうとの提案を受けたようでした。「将来相続する人も喜んで、一石三鳥ですよ」くらいのセールスは受けているでしょう。。。即座にやめるよう進言しました。

しかし私がやめるよう進言しても、未練があるのかその提案書を中々手放しません。それだけ不動産収入は机上では魅力的です。今回、最終的にその提案は断ったようですが、多額の借金が相続人の財産を全て奪い、大変なことになる例は非常に多いです。みなさんも地元の地主さんが土地や建物を手放していってる話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

相続税対策で建築した不動産が差押えられ、競売になってしまった話

以前、相続税対策のために自宅とその隣などにある土地にRCマンションを二棟建てた後、相続人が借金の支払いに困り、マンション二棟だけでなく自宅まで差押えになり、最後は、競売になってしまった案件がありました。

私たちは、そのマンションなどを全て購入する買主側の担当として携わっていましたが、差押えになった方とじっくり話させていただくと、なんとも気の毒な歴史をたどってきたことがわかり、

「こんなマンション建てなければ良かったのに!」

と相続人はやり場のない怒りで一杯でした。そこで、この家族がどうにか再起できるよう、自宅だけは残した状態で負債を無くす方法を提案していたのでした。。しかし、不動産とは怖いものです。最終的に「RCマンションは売りたくない」と最後の最後で断る決断をなさいました。その後も「このままでは全て失いますよ」と説得を続けましたが、気持ちは変わりませんでした。

結果的に、自宅を含めて全ての財産を失ってしまい、今どうしているかも分かりません。この時は私自身、自らの無力を嘆きました。こういった事例は、世の中では数えきれないほどあるのです。

 

相続税対策で建築した不動産を損切り覚悟で早期売却して助かった話

相続税対策で多額の借金をしてアパ/マンを建築したものの破綻してしまうことの多くは、建設会社担当者によるセールストークを鵜呑みにすることが原因です。リスクに目を向けずに、多額の借金をして建築した代償はあまりにも大きいです。建設会社担当者による相当の接待で骨抜き状態にされた上で、建築の請負契約書にサインしてしまう人の話は良く耳にします。

しかし、最終的には自己責任と言わざるをえません。ご自身でまいた種はご自身で刈り取りする必要があります。私たちは、相続税対策で建築した不動産の収益が悪化しそうになった場合、劇的に事業収支を立て直すことが可能でない限り、ご本人や相続人が困らないように急いで売却することを勧めています。

以前、建築費4億円以上かけてRC一棟マンションを建築したものの、10年程で半額以下で売却することになった案件がありました。もし当事者だったら、当初の事業計画は何だったのか、悔やんでも悔やみきれない気持ちになりますよね。

しかし、相続人が多額の借金(負債)を引き継ぐことは防ぐことができました。関係者各位は、ほっとしていたのを今でも覚えています。

売却を決めるまでは、もったいない気持ちがあり顔色は全く優れません。しかし、ご自身の欲のツケを払うべく悔い改めて売却を決断し、新しい人生を歩きはじめたお姿は、意外とスッキリしていました。高い授業料になりましたが、早急に不動産を売却して清算することは、決して間違っていなかったでしょう。

 

相続税対策とはいえ、安易に借金をすることは避けましょう

相続税対策の名の下に、多額の借金によりアパ/マンを建築するなどして、ムリのある不動産事業を開始することはぜひ避けましょう。借金まみれで相続人に迷惑をかけるだけでなく一生を台無しにするくらいでしたら、多額とはいえ潔く相続税を支払って、残った現金で普通の生活を送る方が幸せではないでしょうか。

そもそも相続税の課税対象になる程の資産をお持ちなのですから。

確かに、土地はあるが現金はないので、相続税を現金で支払うことはできないという方も相当数います。我が国の財政が決して良くないこともあり、現金で相続税を納付せずに物納することを国は喜びません。だからといって、多額の借金をして不動産を新築して、全ての財産を失うのも本末転倒です。

土地を持っているが現金はないという方の多くは、土地を駐車場として貸し出していて固都税負担金くらいの収入にしかなっていません。この場合は、この異常とも思われる不動産価格高騰の時期に、早めに売却して(税金納付後)現金化しておく方がいいと思います。そうすれば、相続税の支払を現金で支払うことにも困らないはずです(遊ぶお金に使ってしまうのは論外です)。

先祖代々からの不動産をご自身の代で手放す心の痛みは分かりますが、リスクを鑑みると、早めに現金に変えましょう。借金まみれで不動産を保有して偉ぶっている人よりは、多額のキャッシュを持って慎む生活を送っている人の方が強いですからね。

 

相続税対策で不動産投資をするのはアリかナシか

来年から相続税が増税になるといっても、それで終わりではなく、近い将来さらに増税になるかもしれません。金利も上がり、手残りが今よりも少なくなることも覚悟しなければなりません。賃貸用物件が居住用であれ、商業用であれ、類似の不動産との競合は避けられないので、立地や設備等不動産そのものの魅力を長期間にわたり保ち続ける費用(コスト)も予測しなければなりません。

ですから、私たちのお客様で相続税対策のために不動産投資を行う方には、その地域の一等地にある不動産の購入を勧めます。あるいは、賃貸需要が長期間見込める土地を保有している場合には、その土地を有効活用する目的で不動産投資(建築)を行っています。つまり、相続に関わるかどうかは関係なく、純粋に今、もしくは近い将来に事業の柱になるかどうかの不動産投資を行い、プラス相続税対策になればOKという考え方です。

ご自身に老後を過ごすための十分な現金があり、かつその地域の一等地や賃貸需要が長期間見込める土地を保有しているというような状況であれば、不動産投資による相続税対策を行う利点は大きいと思います。