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WeWorkショックは不動産テックベンチャーの沈静化に

2019.10.2|不動産投資ニュース

ソフトバンクが後押ししてきたWeWork の経営者とその一族の辞任や、IPO(株式上場)の一旦撤回について連日報道されています。We社が近い将来資金調達できなければ、同社にビルを一括貸し等している所有者への家賃滞納も懸念されます。今のペースで支出を続けた場合、早ければ来春に資金不足に陥る見通しのようです。

米ウィーワークがIPO撤回、中核事業に注力し財務改善

IPOの目論見書によると、同社の6月30日時点の現金及び現金同等物は約25億ドル。しかし、2018年には売上高が倍の18億ドル近くに増加する一方で、赤字も倍以上の19億ドルに膨らんだ。

同社は今年8月に銀行から60億ドルの融資合意を取り付けた際、IPOで少なくとも30億ドルを調達することが条件とされた。IPO撤回で、別の資金調達手段を確保する必要がある。

アナリストによると、同社は今後数年間に数十億ドルの資金を使い果たす可能性があり、新たな資金を調達し続けることが必要という。

(中略)

昨年4月に発行された同社の6億6900万ドル規模の高利回り債は30日、IPO撤回の発表を受けて過去最安値に下落。利回りは約11.75%に上昇し、対米国債利回りスプレッドは1000ベーシスポイント(bp)超とこれまでで最もワイドな水準となった。

多額の資金を背景に、相場より若干高めの賃料で大都市の好立地ビルを一棟借りし、破格の改修費をかけつつ小口で転貸借することが、WeWorkのビジネスモデルでした。建物の内外装が素晴らしく、世界の主要な都市でスタートアップ企業だけでなく世界的な大手企業が入居したことから、WeWorkがブランド化しました。

未上場企業のWe社は、ソフトバンクGから巨額の出資を受けることで同社の企業価値が桁違いになることで、更に巨額の資金調達が可能になり、その資金を背景に世界の主要国で上記と同様の手法で出店をしていました。本来ならば先月にはIPOでさらに資金調達をして一層事業拡大する予定でした。

ところが実態は、以下の記事の通り、既に今春にはロンドンでWeWorkへの一括貸しが反対される状況でした。

WeWorkへの融資拡大、銀行は警戒か-事業拡張妨げる恐れも

  • 昨年19億ドルの赤字を出し、社債格付けはジャンク級という現実
  • 未上場のウィーワークの評価額は470億ドルに膨らんでいる

ロンドンにあるオフィスビルのオーナーは、全8フロアへの入居を希望する企業とリース契約を交わしたが、意外にも取引銀行のINGグループは首を縦に振らなかった。

(中略)

ウィーワークの幹部らも、銀行との関係を強化する必要があることは認めている。何せ未上場の同社は昨年19億ドルの赤字を出しており、社債格付けはジャンク級だというのが現実だ。

加えて、We社のIPO前の8月に公開された目論見書(S1)をベースに精査された同社の企業価値が当初の470億ドルと比較して大幅に下落したことで、このままIPOをすると、最大の出資者であるソフトバンクGの財務状況が多大な影響を受けてしまう危険性が高いこともあり、結果的にIPOを撤回せざるを得ない状況となりました。We社は、IPO前提に更なる追加融資を受ける予定だったようですがそれも困難になり、近い将来の資金繰りに窮し始めることとなりました。

海外大手メディアの記事です。

WeWork property defaults may be next after failed IPO, says mega-developer Don Peebles

It’s possible that WeWork will see a “significant pullback” in access to any kind of capital, Peebles said, adding it will likely need to give back property to stay in business. “I’m not sure lenders would see them as a significant investment opportunity anymore.”

(ご参考までに意訳です)

WeWork関連不動産の家賃滞納は、IPOに失敗した次に起ることかもしれません:大規模デベロッパーDon Peebles氏

Peebles氏は、WeWorkがあらゆる種類の資本へのアクセスにおいて「大幅な撤退」を余儀無くされる可能性があると述べ、WeWorkがビジネスを継続するためには、借りている不動産を返還する必要がある可能性が高いと付け加えました。

 

どうやらWe社への最大出資者のソフトバンクGは、多額の借金をして出資していたようです。

孫社長個人の保有株式を担保にした借り入れの記事です。

ソフトバンクG孫社長の保有株式、担保提供が増加-下落リスクも

孫社長は、10兆円規模のビジョンファンドにも投資しており、ファンドの投資が成功すれば多大な利益を得る半面、失敗すれば多大な損失を被る。ソフトバンクGが筆頭株主である配車サービスのウーバー・テクノロジーズの株価下落やウィーワークの上場を巡る混乱は、ファンドの収益を押し下げる見通し。

このような背景もあり、別の海外メディアの記事ではソフトバンクGのWeWorkのIPO撤回後の財務状況についての記事も公開されていました。We社に万が一のことが発生すると、ソフトバンクGに飛び火し、同社への融資元銀行も含めて近い将来大問題に進展する危険性があることと、各種証券と混ざり日本も含めてジャンク債として販売されたWe社の社債の返済も困難になる危険性があると思います。そうならないことを祈念します。

 

ソフトバンクGが企業価値を見誤った原因は?

ソフトバンクG(というより孫社長)に対して、投資後の転売的な価格をアドバイスした世界最大手投資銀行にも原因があるような記事が公開されています。

Masayoshi Sons unyielding optimism — and lack of challengers — led SoftBank to overvalue WeWork, sources say

Those close to Son say his faith in WeWork isn’t based on misdirection as much as it’s founded in his belief that the company will turn into a massive financial success with time and others would view it in a similar light. CNBC and other publications have confirmed J.P. Morgan, Goldman Sachs and Morgan Stanley told Son and Neumann they could find buyers for WeWork between $60 billion and $100 billion, according to people familiar with the matter.

(ご参考までに意訳です)

孫社長と関係が近い人々は、孫社長のWeWorkへの信用は誤った指示に基づいているのではなく、会社が時間とともに大きな経済的成功を収め、他の投資家たちがそれを同じの観点から見るようになるという信念に基づいていると述べているようです。この問題に詳しい人によると、CNBCや他の出版社は、JPモルガン社、ゴールドマン・サックス社、モーガン・スタンレー社は孫社長と(かつてのCEOの)アダム・ニューマンに対して、600億ドルから1,000億ドルの間でWeWorkの買主を見つけることができると語ったとのことです。

世界最大手の投資銀行数社が述べた転売先がそのような高額であれば、ソフトバンクGが企業価値を470億ドルと見積もりしたことも理解しなくもないです。ウォール街の闇的な印象も受けないでもないですが・・・。

一方では、以下のような暴露的な記事も報道されています。

おしゃれワークスペース・WeWork暴露記事で孫さんピンチ。アダムCEOを更迭か

10. WeWorkが470億ドルもの評価額をつけたのはひとえに、日本の約1名が9回も投資したからだ。毎回、6~12か月前に自分が投資したときの倍の評価で投資を続け、結局、120億ドル(約1兆2906億円)注ぎ込んだ。ソフトバンクが最初に投資したのは2012年で、以後、他社はもうどこも投資していない。WeWorkが470億ドルの会社だと言っているのはもはやSon Masayoshiとアダム・ニューマンだけだ。[…]

11. なぜMasayoshiほどの頭脳の持ち主がこれだけのあからさまな詐欺にビリオンドル規模の金を投じるのか自分にはまったく理解できない。アダムとミゲルにまんまと騙されたのか。いや、ただ単にアダムもミゲルもMasayoshiも、持ち株を流通市場やIPO後の市場で100ビリオンドル以上の高値で売れないから、ソフトバンクの計9ラウンドの投資だけを根拠にアダムとミゲルに470億ドルの会社とPRしてもらうほか打つ手がないだけなのかもしれない。[…]

12. アダムの家では妻のレベッカもMasayoshiを口説き、もうひとつのポンジスキーム案件WeGrowに1億ドル投じさせた。

13. 危うくもう160億ドル追加投資させられるところだったが、サウジアラビアにFuture Fundから投資を引き上げると脅されて初めてMasayoshiも目が覚め、さすがにそれは思いとどまったからよかったようなものの、あのままずるずる160億ドル出資していたら危うくIPO前のFacebookの調達額の15倍を注ぎ込むところだった。追加投資のアテが外れたアダムは、IPOを早めるよりほかに道がなくなったんだろう。今はきっとIPOが延期になって、もっと細かい財務状況が用意できなくて戦々恐々なのではないか。IPOが永久に延期になれば、会社が立ちゆかなくなる心配もある。

14. 2016年、WeWorkは利益予想を76%下方修正し、それを内部告発した女子社員を訴えた。

15. 同業他社には最大手IWGと最高級LEO(ロンドン・エグゼクティブ・オフィス)のように黒字経営のところもある。120億ドル(約1兆2906億円)あればIWGを4回買収してもまだお釣りが出る計算だが、ソフトバンクはそれをまるまるWeWorkに注ぎ込んで、毎年IWG1社分の損を出しているのだ。

(中略)

20. それがどうしてここまで注目を集めたのか? 初期シードマネーを出資したビルオーナーのMortimer Zuckermanという人物がたまたまFast CompanyとNYポストの社主で、提灯記事を書かせまくったからにほかならない。「評価額がすごい」「彗星の如く現れた注目企業」と自分の投資先の会社をせっせとPRしたのだ。「今もっともイノベーティブな会社」というFast Companyの提灯記事はWikipediaで今も引用されている。

マネーゲームの道具的な存在となったWeWorkは「ババ抜きのババ」になる?

本来であれば、マネーゲーム的な結末の「WeWork ショック」と、上記記事のように別の大手企業が黒字化しているシェアオフィスビジネスそのものはそれなりに分けて考える必要があるのですが、WeWorkについては、資金繰りの悪化が報道されていますので、ビル所有者側からすれば、WeWorkへの一括貸しリスクが高まっています。

個人的には、シェアオフィス事業の社会的貢献度等を鑑み、WeWorkに勤務する方々のご活躍を心より祈念致しますが、残念なことに今後はWeWorkを「ババ抜きのババ」として認識してしまうビル所有者も増えてくるように思います。

今後、WeWorkが入居するビルを含めてREIT(リート)を組成して証券化し、マイナス金利政策の影響で運用先に窮する様々な機関投資家等に販売するビジネスが行われていくことも予測されます。

もっとシンプルなビジネスは、WeWorkが入居中のビル所有者が、賃料の不払いリスクを恐れて、ビルを高値で早期に転売することです。その場合は、WeWorkの賃料は相場より若干高めであることが想定されます。その賃料から算定した利回りをもとにした売買希望価格はやや疑わしいです。

ですから、後日「高値づかみさせられた!」と嘆かないよう、WeWork関連の不動産へ投資等をする場合は、どうぞお気を付けください。

 

「WeWorkショック」により、恣意的とも思われる程傾倒した巨額の企業価値を大赤字の未上場企業に対して値付けした上で、株式上場したりベンチャー・キャピタルから比較的容易にスタートアップ企業が資金調達できたブームが去るのではないかと多くの専門家等から指摘され始めています。

結果的に、プロトタイプ(試作)的な事業を作っては資金調達したり事業を販売する企業が散見されている「不動産テック・ブーム」も去り、真に実力があるベンチャー企業等が生き残っていくことにつながりそうですね。

 

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