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J-REITの時価総額9兆円に到達!そこから見えてくるもの

2014.10.16|不動産投資ニュース

20141017

今月、不動産証券化協会(ARES)はJ-REITに関する最新レポートを公開しました。レポートにはJ-REITの時価総額、取得した物件内容や価格等について記載されています。J-REITの動向は不動産市場の価格形成に大きく影響を及ぼすことから、適時ウォッチしておきましょう。

 

Jリートの時価総額がどんどん上昇しています。ますますJリートに大量の投資マネーが流入しそうです。

J-REIT REPORT  October 2014(PDF)
9月末の J-REITの時価総額は9兆800億円となり、初めて 9兆円台に到達した。今年5月に8兆円を突破してからわずか 4ヶ月で約1兆円増加した。この間、新規上場は1件のみであり、既存REITの増資は比較的活発であったが、投資口価格の上昇が時価総額増加の最大の要因であった(5月末から9月末にかけて時価総額は10.4%増加したのに対し、東証REIT指数は6.8%上昇した)。

 

みずほ証券が公開している下記米国(US)リートの資料によると、2013年9月末時点では、Jリートの時価総額は約661億米ドルでしたので凄い成長スピードです。リートの先駆者である米国リートの動向について確認してみると、Jリートの将来についても色々なことが見えてきます。

US−REIT3つの魅力(PDF)
US-REITの値動きに影響を与える不動産賃貸料収入は 、経済成長に沿った安定的な成長が期待できます。過去を振り返ってみると、US-REITの価格変動による損益は 、金融危機の影響を受けて大きく下げた局面などを除いて概ね良好に推移しており、加えて安定的な配当収益が得られています。

 

私がアメリカに滞在していた2002年頃は、米国リート同士のM&Aと、高齢者住宅や医療等に関するヘルスケア・リートの躍進を頻繁に目にしていました。また、ネット通販の拡大により、物流倉庫が不足気味になったこともあり、日本でも大規模なビジネスを展開中のプロロジス等の物流リートが世界規模に拡大しつつありました。余談ですが、あまりに収容先が足りないために刑務所リート(刑務所用の不動産を賃貸する収入を配当するリート)まで立ち上がるあたりは米国らしいと思いました(苦笑)。

今後、企業のM&Aのように、規模が小さくても将来性のあるリートは、資金力のあるヘビー級のリートにM&Aされることが通常に行われることになるでしょう。

 

昨年の記事ですが、海外の年金基金などの機関投資家が、Jリートにも興味を示していることについて記載されていましたので引用させていただきます。

外資も若者も群がる、活況のREIT市場

海外の機関投資家も存在感を増しつつある。以前であれば、日本のREITには見向きもしなかったが、「問い合わせが増えているだけでなく、年金基金などの上級幹部が面談に訪れるようになった」

これまで、日本のREITは投資家よりも母体企業におもねった経営に陥りやすく、それが市場拡大の阻害要因となってきた。だが、外資系が新機軸を打ち出したことで、業界の慣習に風穴が開こうとしている。

これまで、日本のREITは投資家よりも母体企業におもねった経営に陥りやすく」と記載されていますが、これは一体どういうことを指摘しているのでしょうか。

 

自らスポンサーとなり組成したリートに、保有不動産を転売させて発生するキャピタルゲイン

Jリートにどんどんお金が流れ込むと、資金を運用する必要がある各リートは否が応でも不動産投資をしなければなりません。その結果、自ら開発、あるいは取得した不動産を自らスポンサーとして組成したJリートに売却する例が多数生まれます。

不動産証券化協会が公開した上記レポート(「J-REIT REPORT」)によると、オリックス不動産投資法人は、オリックスグループが開発した物件を取得しています。

オフィス・商業施設など6物件を327億円で取得
4期連続の公募増資で194億円を調達

オリックス不動産投資法人(8954、OJR)は9月、公募増資等による調達資金で、商業施設を3物件、オフィス、住宅、物流施設を各1物件の計6物件を総額327.4億円で取得すると発表した。いずれもオリックスグループによる築浅の開発物件となっている。

同様に、東証一部上場企業のトーセイは、自らスポンサーとしてリートを新規に組成して上場を目指すことになりました。

トーセイ・リート投資法人 の上場計画を発表

トーセイの 100%子会社であるトーセイ・アセット・アドバイザーズは 9 月、同社を設立企画人として「 トーセイ・ リート投資法人 」を設立し、東京証券取引所への上場を目指して準備を進めることを決定した。 組入不動産の種別や上場予定時期などについては明らかにされていない。

自ら保有することを目的として、例えば年間賃料収入が2億1千万円の商業ビルを、表面利回り10%(売買価格:21億円)で購入したとします。後日、自らスポンサーとして組成したリートにこの物件を7%で転売する(リートの運用資産に組み入れる)ことが出来た場合の売買価格は30億円になります。単純計算すると、キャピタルゲインは9億円になります。もちろん各種税金等が別途かかるのですが、それでも相当のキャピタルゲインを手にすることができます。この売買に関して売主、買主からもらえる多額の仲介手数料についても、グループ内で分け合うことができます。

 

利益相反にはならない?

この究極の錬金術とも呼ばれるビジネスモデルについては懸念されることがあります。投資家にとっては、出資したリートに割高な価格で不動産を組み入れられるので、利益が損なわれる危険性が出てきます。これが「利益相反の問題」の典型的な例です。

この問題については、各リート側が以下のようなコメントを公開しています。

全部イオングループで、利益相反への対策は大丈夫?

投資家に懸念されることとして、利益相反の問題があげられます。例えば、イオンが不動産を割高な価格で売却すれば、イオンリートへの投資家の利益が損なわ れ、イオンリートが相場より高い賃料でイオンに貸せば、イオンの投資家の利益が損なわれるという両面を併せもっています。
また、同じグループ会社であるため、グループ内の力関係によってイオンリートが不利な条件を飲まざるを得なくなるという構図も危惧されています。

こうした利益相反への対策として、イオンリートは投資主とイオングループ双方とのウィン-ウィンの関係構築をはかるための枠組みを作り、投資家に不利益となることがないよう、内部統制の仕組みを構築しています。

東急リアルエステート・投資法人

利害関係者との取引における自主ルール策定及び複階層チェックによる利益相反回避策

1. 利害関係者からの物件の取得
i. 不動産及び不動産信託受益権の場合

a.1投資案件当たりの「投資額」(物件そのものの購入金額のみとし、鑑定評価額の対象になっていない、税金及び取得費用等の他、信託勘定内の積立金、信託収益、固定資産税等の期間按分の精算額を含みません)は、鑑定評価額を超えないものとします。
ただし、今後、本投資法人の投資適格物件を利害関係者が本投資法人への譲渡を前提として一時的に取得し、その後本投資法人が取得する場合には、本投資法人は利害関係者からの物件の取得にあたり、「投資額」とは別に、利害関係者が当該物件取得のために負担した諸費用(仲介手数料、デュー・ディリジェンス費用、専門家報酬等)相当額を負担することができるものとします。

b.当該鑑定評価額が妥当であるかを確認するため、セカンド・オピニオン(当該鑑定評価を前提としたその妥当性についての意見をいいます。以下同じです。)を専門的知識を有する第三者から取得し、意思決定の資料として本投資法人の役員会に提出します。

c. (i) 上記鑑定評価額の鑑定評価サマリー及び (ii) セカンド・オピニオン・サマリーについては、取得決定後速やかに開示します。また、上記(a)ただし書に従い本投資法人が、利害関係者が当該物件取得のために負担した諸費用を負担した場合には、負担した費用総額、費目及び支払先(支払先が利害関係者の場合には、当該利害関係者への個別支払額を含みます。)を、取得の決定後(ただし、当該時点で未確定の費用については、費用の額が確定後)速やかに開示します。

いずれにしても、「『利益相反』とは言えない」 ですが、微妙なラインです。リーマンショック前は、このリートを出口とした究極の錬金術モデルは、当たり前のことのように不動産ファンドが行っていました。

ファンド組入用不動産の鑑定評価額が妥当であるのか、利害関係人との恣意的な価格による売買については、リーマンショック前にも指摘されていました。その頃の記事ですが、現在においても参考になりますので引用させていただきます。

求められる不動産価格の妥当性検証(PDF)

鑑定評価額はピンポイントの価格にならざるをえないが、個別性の強い不動産について、キャッシュフローや金利の変化、出口戦略などを勘案して収益還元価格を査定する以上、「適正な市場価格」にはかなりの幅が存在すると考えるべきである。

ところが、不動産ファンドに関係した不動産鑑定評価額の妥当性については、議論が下火になっています。この問題を指摘すると、Jリートに日銀マネーまで流しているんだから邪魔するなと、どこからかお叱りをうけそうです(苦笑)。

 

出口ではなく入口としてリートを立ち上げた例

リートに転売するのが出口ではなくて転売するのが入口というコンセプトのもと自らリートを立ち上げた例もあります。以前の記事ですが、参考までに引用させていただくこととします。

星野リゾートのREIT戦略(1)所有・運営の分離で相乗効果狙う

これまでいろいろなREITをみてきて、利益相反だとか独立性について語られる割には、エグジットが目的のREIT組成も多い気がしています。REITに物件を組み入れた段階でスポンサー側が利益を上げて、それで終わりなんじゃないですかと。あれが利益相反でなくて、我々が利益相反だと言われるのは疑問です。私たちの場合は、REITに組み入れてもらえる案件をつくり、組み入れてもらってからがスタートです。組み入れたけれどいまひとつの競争力だったとか、よくない案件だったとか、利回りが低かったとなると、次がないわけです。

実際のところ、星野リゾートが組成したリートはどういった不動産を運用しているのでしょうか?公表されている資料によりますと、星野リゾートグループが保有する以外の物件についてバブル購入もしています。

国内不動産の取得及び貸借に関するお知らせ(PDF)(平成26年4月4日)

星野リゾート・リート投資法人(以下「本投資法人」といいます。)が資産の運用を委託する資産運用会社である株式会社星野リゾート・アセットマネジメントは、本日、下記24物件(以下「取得予定資産」といいます。)の取得及び貸借を行うことについて決定しましたので、お知らせいたします。

国内不動産の取得完了に関するお知らせ(PDF)(平成26年5月2日)

参考までに、当該投資法人に関して今年の7月に公表された運用体制等に関する報告書の内容をみてみましょう。

不動産投資信託証券の発行者等の運用体制等に関する報告書(PDF)(平成26年7月28日)

投資基準

本投資法人は、ホテル、旅館及び付帯施設への投資にあたっては、国内のホテル・旅館等のマーケット環境を分析して当該物件の競争力及び将来性を検討するとともに、ポートフォリオ全体の成長性及び収益性と、ポートフォリオ全体におけるリスクも勘案の上 、投資の可否を総合的に判断します。

投資金額

1物件当たりの投資金額が5億円以上であることを原則とします。ただし、その他の事項も含め総合的に勘案して投資が適正と判断される場合には、投資金額が1 物件当たり5億円未満の物件についても、投資を行うことができるものとします。

星野リゾート・リート投資法人については、宿泊ビジネスが比較的景気や自然災害に左右されやすく、星野リゾート本体の事業リスクの影響を受ける危険性も存在するので、投資リスクを感じる一方、他のリートとは若干コンセプトが異なることと、小さめな事業規模ということも相まって個人的には応援したくなるリートです。今後のますますの活躍を祈念します。

 

とどまることを知らない不動産投資と金融の融合ビジネスの行く末とは

国策により、不動産市場、特にリートに大量の投資マネーが溢れ、不動産と金融の融合ビジネスである不動産ファンドビジネスにより、続々と高額な不動産売買が成立しています。売買物件が足りずに、どんどん新規に不動産開発がされ、さまざまなエリアで不動産価格が高騰しています。この状況が続けば、リーマンショック前に時計の針を戻すことになるでしょう。転売利益や、不動産ファンドへの転売時の売買に伴う仲介手数料、ファンド組成、運営に伴う各種フィーなど、凄まじいほどの収益が、不動産ファンド関係者にもたらされています。

事実、こんな高額での不動産売買が、いつまでも続くはずはないと関係者の多くは思っています。今は勢いで売り買いが続いていますが、最終的には誰がババを引くかのマネーゲームです。一般的なモラルを超えて行き過ぎたビジネスにならないことを祈りますが、当面はこの不動産ファンドビジネスの勢いは止まらないかもしれません。