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新型肺炎問題と不動産ビル経営

2020.3.27|不動産投資ニュース

『週刊ビル経営3月2日号』「コロナショック/不動産業への影響と対応」特集内で、インタビュー記事が掲載されたのですが、その後世界連鎖株安が発生し、不動産業へのマイナス影響も顕在化してきています。

新型コロナウイルス感染症の流行はビル賃貸業にも直接的・間接的に影響を与えています。S・Aクラスのビルではテナントに大企業が多く、感染防止の観点からリモートワークの導入が急速に広がっています。この流れが昨今の働き方改革と相まって、都心オフィスに通勤しないでも勤務できる環境が整ったとき「本当にS・Aクラスのビルに入居している意味はあるのか」という疑問や、「払う賃料コストを抑えて設備投資や内部留保に回す」という動きが出てくることも予想されます。また中小ビルでは入居テナントの業績面を懸念しています。輸出入などでの中国関係企業、イベント関係の企業は今回のことで業績に打撃を受けています。

大打撃を受けているのはホテル業ですが、オフィスビル等賃貸業においても悪影響の懸念が増しています。

コロナが観光業界に打撃 2月訪日外客数は前年同月比58.3%減

現状、目に見えて打撃を受けているのはホテル企業。ただ、オフィスビルや商業ビルなどを中心とする賃貸業への影響も懸念される。

大地震等の大災害リスクに比べると、昨今大きく下落した東証REIT指数の動向のような急激な価格の下落が現物の不動産投資市場に発生するわけではないですし、金融システムが先に麻痺したリーマン・ショックとは性質が異なるのですが、金融市場の影響を大きく受ける不動産市場については、今後の動向に要注意です。

 

中小企業が多く入居する中小ビルについては、先日掲載された弊社のインタビュー記事の通り、やや悲観的な意見を述べていました。

2020年不動産市況 中小ビルオーナー・担当者はこう見る

―このような環境下で、中小ビルの市況はどのように見ていますか。

中島 首都圏の範囲で見ると、決して良くないと思います。私が気になるのはテナント入居者となる中小企業の倒産が増加していることです。東京商工リサーチの発表によりますと、負債1000万円未満の倒産がリーマン・ショック直後の2009年、2010年と同等の数字になりました。現在満室のビルでも中小ビルはテナント数が少ないため、1テナントの退去が2桁レベルでの稼働減につながります。負債1000万円未満は小規模なところが多いと思いますが、中小ビルにとって懸念材料になるものです。

今後公表される企業業績データは、他業種にわたり業績悪化を示すでしょう。中小ビルの入居者となる数多くの中小企業とその企業が入居する中小ビル所有者の多くが、新型肺炎問題でマイナスの影響を受ける可能性が高いです。

 

「働き方改革」推進・雇用低迷化により大規模ビル経営にも影響あり

大規模ビルについても、主な入居者となる大企業の業績についても悪化する可能性が高いので、じわりじわりとマイナスの影響を受けることが想定されます。

1~3月期景況感、大幅悪化 新型コロナで2桁マイナス―イベント自粛要請前の調査

財務省と内閣府が12日発表した1~3月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数はマイナス10.1(前期はマイナス6.2)となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で大幅に悪化した。ただ、調査時期が2月15日時点と政府の大規模イベント自粛要請前だったため、景況感はさらに悪化している公算が大きい。

新型肺炎問題により、特に大企業においては、働き方改革を契機としたリモートワークの推進姿勢と、単独ではコントロールし難いビル内での感染者発生による事業中断リスクが顕在化しています。高額な固定費の一つである賃料支払いを減額し内部留保や設備投資に振り分けるべきという提案に加えて、オフィスの分散化についても企業内や株主から提案が行われても不思議なことではありません。

 

大きな影響を受けている貸会議室大手のTKP社に関する以下の記事では、昨今のオフィス移転のトレンドであった「集約」から「分散」への揺り戻しについて記載されています。

コロナ直撃で株価半値に、TKPに秘策はあるか

テレワーク需要とらえ、貸オフィスで反撃

政府による外出自粛要請が痛手となり、貸会議室利用のキャンセルが続出。加えてビュッフェスタイルでの宴会の取りやめや、フランチャイズ方式で運営しているアパホテルの稼働率を維持するために宿泊単価を引き下げたことが追い打ちをかけた。

「必要なときに必要なだけ使える」ことが最大の強みだった貸会議室だが、新型コロナウイルスで不要不急と見なされた瞬間、一気に逆回転を始めた格好だ。

(中略)

ここ数年、オフィス移転のトレンドは「集約」だった。再開発に伴って大型ビルが相次いで竣工。社員を丸ごと収容できるスペースが生まれたことから、これまで分散していた拠点をビル1棟やワンフロアに集める動きが進んだ。働き方改革やイノベーション促進の観点から、オフィス設計を固定席からフリーアドレスへと移行する動きも目立った。

だが、感染力の強いコロナウイルスは、1カ所に社員が集まるリスクを浮き彫りにした。もし感染が確認されれば、影響を受ける社員が多いうえ、オフィスビルが一時的に閉鎖となれば業務の拠点を失ってしまう。感染の拡大を受けて、不特定多数の社員が机やいすを共有するフリーアドレスを休止した企業もあるようだ。

TKPはこれを逆手に、オフィスの「集約」から「分散」へ揺り戻しが起きるとにらむ。リージャスはシェアオフィスの一種ではあるものの、共有するのは受付や給湯室など共用部分のみ。執務スペースは基本的に入居企業ごとに壁で仕切られ、一般的なシェアオフィスに比べて感染の懸念は少ない。

優秀な人材の転職防止と新規人材確保の視座から、好立地・高品質ビルに事務所を構える需要の高まりはビル業界にとって幸いな話でしたが、新型肺炎問題を契機として、高額な賃料を要する大規模ビルに従業員を集約させることの是非について、既存入居者や大規模ビルへの移転計画がある企業において再検討の議論がなされると思います。

日本の大企業の場合は日和見主義的なところがありますので、同業他社の動向を見ながらとなり、急激にオフィスの分散化が推進されるわけではないと思います。但し、前向きに行われてきた雇用については固定費削減を目的とした雇用戦略見直しや大規模人員整理が行われることも予想されるため、賃貸借面積を減少させることを検討する企業は増加するでしょう。

新型肺炎で雇用問題/“自粛”非正規を直撃/長期化、リストラ懸念も

東京商工リサーチは2月7~16日に国内1万2348企業に新型肺炎の影響調査を実施した。製造と卸売り、小売り、運輸、観光業を含むサービス業で、売り上げ減少などの影響が「既に出ている」「今後出る可能性がある」と回答した割合が約6~8割に上った。

担当者は「今は生産ができないなど一時的な問題にとどまっているが、長期化すれば経済減速による需要減少の問題に移る」と分析。「企業業績の悪化がリストラや中小企業の倒産増加につながるだろう」と、正社員の雇用にも影響が広がる可能性を指摘した。

比較的楽観的な見方がなされてきた大規模ビル経営においても、今回の問題は無視できる状況ではありません。

新型肺炎問題については先行きが不透明ですので、ビル経営側としては、悲観的な状況も想定しつつ、今まで以上に慎重な経営姿勢が求められます。

 

 

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