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過熱!Jリートに投資リスク増 平均分配金利回り2%台、不動産取得額は対前年比3割減

2015.1.16|不動産投資ニュース

20150116

2014年の世界の商業用不動産投資額は、リーマンショック前のピーク(2007年)の取引額9割まで回復してきたとのことです。2014年第4四半期の投資額は、第4四半期のみの投資額としては史上最大です。一方Jリートの2014年は、前年と比べ不動産取得額は 3割減となったとのこと。平均分配金利回りはついに2%台に突入。時価総額が今年11兆円を超えそうな勢いのJリート、本当に大丈夫?

2014年世界の不動産投資額、5年連続増加の7,000億ドル(18%増)  リーマンショック前の9割超回復

総合不動産サービス大手のJLLグループ(本社イリノイ州シカゴ、社長兼最高経営責任者コリン・ダイアー、NYSE JLL、以下:JLL)がまとめた投資分析レポートによると、2014年通年の世界の商業用不動産投資額は、速報ベース※1で前年同期比18%増の7,000億ドル※2となり、2010年以来5年連続増加、リーマンショック前の2007年の9割の水準に回復しました。日本の2014年通年の投資額は、前年同期比7%増の438億ドル(円建てでは18%増の4兆6,900億円)となり、円建ての投資額としてはリーマンショックが起きた2008年と同程度の水準となりました。
(中略)

JLLリサーチ事業部長赤城威志は次のように述べています。

「2014年第4四半期の投資額は、前年同期比で1.5倍と大幅増加し、第4四半期のみの投資額としては観測史上最大となりました。2014年通年では、前年比倍増した2013年の投資額からさらに拡大し、依然として新規上場や物件取得の動きが見られる上場REITに加え、私募REITやその他ファンド、海外投資家による投資額の増加が目立ちました。多くの企業の決算期である3月が含まれる来期の投資額に期待が高まります。」​

では、我が国におけるJリート市場はどうなっているでしょうか。

 

Jリートの2014は、前年と比べ平均分配金利回りは低下、取得額は3割減

先日、不動産証券化協会(ARES)はJリートに関する最新レポートを公開しました。

「J-REIT REPORT Vol.62(2015年1月)」(PDF)

《 分配金利回り ・ NAV 倍率》 (3頁目より)
2013年末に3.6 %であった平均分配金利回りは、投資口価格の上昇に伴い、2014年末には 3.0%となった。しかし、長期金利が金融緩和により年末には過去最低水準の 0.3 %まで低下したため、イールドスプレッドは 2.9 %( 13 年末)から 2.7 %( 14 年末)の低下にとどまった。

《投資部門別売買状況・J-REIT投信》(4頁目より)
東証における投資部門別売買状況をみると、 銀行が一貫した買い越し主体となっている。 超低金利下にあって、安定した高い利回りを確保できる運用先と評価されている。売買シェアの約半分を占める海外投資家のまとまった買いが入った月は、投資口価格が大きく上昇した 。

【 3 】 資産取得額 前年比 3 割減の 1 兆 5,763 億円 取得競争 厳しく (6頁目より)
J-REITの2014年の資産取得額(引渡日ベース)は1 兆5,763 億円(前年比 29.4 %減、396 件)であった。資金調達環境は良好で各REITの物件取得意欲も旺盛であったが、外資や事業会社、私募ファンド、私募 REIT 、生保などとの競合が激しく、過去最高を記録した前年と比べ取得額は 3 割減となった。 なお、譲渡額は1,541 億円であった。

Jリートの予想分配金利回りはどんどん低下しています。

Jリート予想分配金利回り

東証1部株式配当利回りにどんどん近づいてきていますね。

なお上記記事において、「イールド」とはJリート全体の平均予想分配金利回り、

「スプレッド」 = 「Jリート全体の平均予想分配金利回り」 - 「国債10年物最長期利回り」

です。

長期金利の指標となる満期10年国債の利回りもどんどん下落し、過去最低を更新しています。

長期金利、3日連続で過去最低更新 世界経済に不透明感
15日の東京債券市場で、長期金利の指標となる満期10年国債の利回りが一時、年0・245%まで下落(国債価格は上昇)し、3日連続で過去最低を更新した。原油安で世界経済への不透明感が高まり、安全資産とされる国債が買われやすい傾向が続いている。

これだけ長期金利の利回りが下がっているので、Jリートがなんとか成り立っている状況です。

 

溢れる巨額な投資マネーに後押しされたJリートに潜むリスク

しかし、ひとたび長期金利が上昇局面に転じた場合、借り入れ比率が高いJリートは一転して事業収支が悪化する可能性があります。

以前、

日銀の追加金融緩和 右肩上がり予想の不動産投資市場にリスクあり?
グローバルマクロとも呼ばれる世界有数のヘッジファンドの動きは、景気指標や一般的な為替相場メカニズムでは説明できない動きを見せる場合があり、結果的に、不動産投資市場と切っても切れない金融市場が混乱する可能性が出てきます。
(中略)

特集:機関投資家の正体 2013年7月30日号
日経平均株価は5月23日から6月14日にかけて2000円以上下落した。その最大の理由は、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が米議会証言で、量的緩和第3弾(QE3)の早期縮小を示唆する発言と一般には理解されている。
「だが、私の考えは異なる」と、ヘッジファンドに詳しいパルナッソス・インベスメント・ストラテジーズの宮島秀直チーフストラテジストは言う。株価急落の本当の原因は、ヘッジファンドの大規模な売りだったというのだ。

◇日本株急落「5.23ショック」の“主犯”はヘッジファンドだった
どういうことか。日本株の売りが始まった最大の要因は、有力ヘッジファンドの「破綻情報」だった。「英国に拠点を置く有力ヘッジファンドが中国のシャドーバンキング(影の銀行)に絡む投資で巨額の損失を出したという観測情報が、ヘッジファンドやその投資家たちの間に駆け巡った」という。
破綻の観測情報が流れたヘッジファンドは、業界でもトップクラスの収益力を誇ることで知られた存在だった。ところが、運用額の3分の1近くを失ったといった情報まで流れ、1998年10月に起きた大手ヘッジファンド「ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」の破綻劇を脳裏に浮かべた関係者も少なくなかったという。
ノーベル経済学賞受賞の2人の学者、ショールズ氏とマートン氏を擁したLTCMは、高度な金融技術を駆使して急成長したが、98年8月のロシア経済危機を契機とする金融混乱に巻き込まれて、あえなく破綻。この破綻劇で、ドル・円相場が2日間で15円近く円高になるなど、日米欧の経済が大混乱に陥った。
「第2のLTCMが出る」──との危機感が業界に伝わると、運用を委託していた顧客からヘッジファンドに解約が殺到。換金を迫られたヘッジファンドは雪崩を打つように、利益が出ていた日本株を売り始めた。

という記事を書きました。その予兆がないわけではありません。

ルーブル暴落、1998年のロシア金融危機よりも危機的な事態になる可能性
ロシアの最近の行動を考えると、ロシアはこの「ルーブルの暴落」という罰を受けるに値する、と思うかもしれない。しかし、この事態は、アメリカをはじめとする世界経済にも影響する可能性があるのだ。1998年のロシア財政危機では、影響を受けたアメリカのヘッジファンド「ロングターム・キャピタル・マネジメント」(LTCM)が破綻し、結果的に金融システム全体が揺らいだ。当時のアメリカ連邦準備理事会(FRB)はLTCMの救済に乗り出さざるを得なくなり、各銀行にも支援を要請した。しかし今直面しているルーブルの暴落は、この1998年の大混乱より悪い事態になりそうな様相を見せているのだ。

ギリシャの問題も関係してきます。

世界経済、今年の波乱は欧州から  ギリシャ、ロシアを皮切りに危機が始まる

今年は世界で何が起こるのか。米国、中国が抱える構造危機は、遠雷のような不気味さを秘めるが、目を離せないのが欧州だ。内なるギリシャと外からのロシア。世界を揺るがす懸案に事欠かず、ユーロ体制が動揺する年になりそうだ。

このような経済危機の発生リスクと、かつてのリーマンショック後の不動産・金融市場の大混乱を鑑みると、溢れんばかりの不動産投資マネーが市場に存在しているとしても、Jリート側としては安易に高額な不動産投資を続けることはリスクが大きすぎると考えるのが妥当ではないでしょうか。

 

Jリートは今後も大丈夫?

今のところ、Jリートに関して経営破綻しそうだという情報はないようです。銀行やアジア投資家がJリートに多額の投資をしていることも、Jリートが活況を呈している要因の一つです。

物流やヘルスケアに殺到、REIT沸騰どこまで

アジア系投資家が台頭

REIT市場が本格的な回復軌道に入ったのは、アベノミクス相場が始まった12年末ごろからだ。13年は個人投資家の需要を背景とした投資信託の買いが牽引。投信の買越額は4240億円と、12年の494億円から急増した。
しかし、14年の春以降、投信の買いは息切れする。入れ替わるように、買い越し基調に転じたのが、アジア系の外国人投資家だ。中国は不動産市場に不透明感が増しており、日本の不動産に投資する傾向が強まっている。
銀行も安定的にREITを買っている。めぼしい融資先がないところに、13年4月、そして今年10月の金融緩和で日銀が実質的にほとんどの新発国債を買い上げることになり、国債市場からも追い出された。国債よりはリスクが高いが、株式に比べるとリスクが限定的な“ミドルリスク”のREITは、銀行にとって数少ない投資先だ。

しかし、Jリートが組み入れている不動産の収支が安定的しているという保証はありません。

Jリートに投資する機関投資家からすれば、大規模修繕費などが発生して収支が不安定になる古めの不動産は、高値でバブル的な今の不動産市場で早めに売却し、新しめの不動産に資産替えすることを望んでいると思います。

一方、Jリートに組み入れる不動産を運用する側としては、資産替えしたくても、

  • 物件取得競争が激しすぎて不動産が高額になりすぎている
  • 円安相場を反映したアジア等海外投資家の高額な購入価格には太刀打ちできない

という理由から資産替えしにくい状況にあると想定されます。

ついては今後のJリートには、大規模地震や災害などの大災害リスクだけではなく、想定外の大規模修繕費が発生し支出が突出してしまい、思い通りの配当ができないというリスクが存在します。

 

また、投資先としては比較的安心なイメージのあるJリートであっても、破綻リスクは存在しています。特に借り入れ依存率が高いJリートは要注意ですね。

かつて、

Jリート vs 実物不動産

という記事を書きました。併せてご一読下さい。

ここで、Jリートの大先輩格であるアメリカのリートから今後のJリートの行く末に関する事を学んでみましょう。

モーニングスターに掲載されている記事です。

「イールドスプレッド」縮小懸念か

 米国投資家の米国リートへの関心が低下した要因として、米国リートの割高感が挙げられる。リートは「利回り資産」として取引される性質があることから、米国リートの割安感・割高感を測る指標として、米国リートの配当利回りと米国10年国債利回りとの差で表す「イールドスプレッド」が用いられる。イールドスプレッドが拡大すると、相対的にリートの配当利回りの魅力度が増し、割安感が強まるため「買い」。一方、イールドスプレッドが縮小すると、相対的にリートの配当利回りの魅力度が低下し、割高感が強まることが予想される。

日本でも利益確定売りに繋がるか
米国リートはFRBの量的金融緩和によって、我が世の春を謳歌してきた。量的金融緩和の蛇口が閉まり、利上げが実施されれば、米国リートに流入していた資金の「逆回転」が起きる可能性もある。例えば、量的金融緩和が始まる2008年11月以前の米国リート指数と足元のイールドスプレッド水準を照らし合わせると、現在の米国リート指数は40%以上の割高と言うこともできる。また、配当利回り面での投資魅力は既に乏しくなりつつある。

この記事から、米国リートはJリートと同様にイールドスプレッドが縮小傾向にあり、投資魅力は既に乏しいということが判明しました。Jリートの予想配当利回りは3%を切っていますので、Jリートへ投資する魅力が薄れてきているのは間違いなさそうです。

また、昨今のイスラム国テロ問題からわかる通り、突発的に投資先の不動産に何らからの被害が発生しても不思議ではないくらい、世界的に政治・経済は混沌としています。いつ戦争がどこかで勃発するかわかりません。行き過ぎた投資アクションは危険ですね。

Jリートに投資する? それとも・・・。

例えば100万円をどこかに投資するとした場合、Jリートに投資して3万円弱のリターンを得ることを否定はしません。ただし、中小企業経営者にとっては、お金の使い方はいつも悩むものですよね。

経営者のためのビジネスマナー 恰好いいお金の使い方
お金の使い方には、個人の価値観が反映されます。個人的な生活におけるお金の使い方については、それぞれの価値観を以て使えばよいのですが、経営者にとって仕事上のお金の使い方については、十分注意する必要があります。

言うまでもなく、経営者はさまざまな場面での振舞いによって、敵味方に関わらず周囲の人に、その人物を測ろうとする視線にさらされています。だからこそ、格のあるお金の使い方をしなければいけません。お金はその使い方ひとつで、いとも簡単に人の振る舞いを上品にも下品にもしてしまいます。

人はお金を使ってくれる人のいう事を聞くものです。人を使っていくには、まずはお金を使うことも大事です。逆に、自分の役に立ってくれている社員に対し、ことあるごとにお金を惜しむ、つまりケチな振る舞いをしていると、遅かれ早かれその社員は離れていくでしょう。

必要な場面では、惜しまずきれいにお金を使うことが、経営者にとって格のあるお金の使い方です。

私たちも不動産投資業界に身を置いていますので、Jリート市場がますます盛り上がってもらいたいと願います。しかし、予想分配金利回りが低くなってきている以上、Jリート投資についてもシビアに見ざるを得ません。

現在のバブル的な不動産投資市場は、かつてのリーマンショック前と酷似しています。Jリート投資をお考えの方にとっては、過去から学ぶために、以下のようなリーマンショック前の警告本に目を通すことも検討してみてはいかがでしょうか。

山本勇作『不動産ファンド当事者の告発 不動産が危ない!』(扶桑社,2007年)