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副業的に個人が不動産投資する場合に設立する「法人向け融資」に問題発覚

2016.9.20|不動産投資ニュース

20160920

副業でサラリーマンが不動産投資をする場合、一部の金融機関では無理のある融資審査の手法が行われて問題になっているようです。

ねじれる不動産市場(下)審査緩和の誘惑 銀行、収益回復に焦り

個人が設立した不動産管理会社向け融資を企業向け融資に分類するな――。首都圏の有力地銀が4月、行員向けに通達を出した(中略)融資目標のノルマ達成を迫られた現場行員が、本来は個人向け融資と分類すべき管理会社を“にわか法人”として企業向け融資にすり替える・・・

企業オーナーや地主さんが、投資する不動産の収入等を管理する目的で法人(株式会社や合同会社)を設立し、その法人で融資を受けて不動産投資をする場合があります。

今回の件はそう言った方々が設立する法人ではなく、個人が副業的に不動産投資をする際に設立する法人向けに融資をする場合の問題についての報道です。

記事によると、首都圏の有力な地方銀行が、本来ならば個人向けに融資できない額を(イレギュラーな手法を使い)融資している可能性が発覚したため、その金融機関内部で、問題の融資手法を止めるよう通達したようです。これは将来的に借金の返済に苦しむ危険性が高くなり、結果的に融資を実行した金融機関も困るからです。

 

不動産投資をする場合の融資には、大きく分けて個人の属性に依存し、融資限度額がほぼ決まっているアパートローンと、高額な融資を低金利で実行可能な事業者向けのプロパーローンに分類することができます。

今回の場合は、おそらく個人の属性に依存するアパートローンに関する問題ではないかと思います。(※金融機関によっては、アパートローンを個人向けに分類していない場合があります。)

あるいは、個人が実質的にペーパー会社を設立して、あたかも事業者のように装った

「にわか法人」懸念

があり、ペーパー会社を一つ、あるいは複数社各地に設立して、様々な地方銀行等からトータルで年収の何十倍もの融資を受ける手法を止めることまで含まれているのかもしれません。

 

「個人」の対象者は、給料で生計を立てている男女に限らず、弁護士さんやお医者さんのような専門職の方や、会社役員のように、一般的にはサラリーマンやOLのカテゴリー外の方も一部含めて良いと思います。

昨今では、弁護士さんやお医者さんのような専門職の方であっても事業経営者ではなく、サラリーマンやOL的な位置付けの方も多いです。会社役員であっても、非常勤で実質的な事業経営者ではない場合もあるからです。

※以下は「個人」の対象者について、男女問わず「サラリーマン」として記載します。

 

マイナス金利下、金融機関の担当者は融資ノルマの達成で困っています

多額の融資ノルマを課せられた金融機関の担当者は、何とか融資先を見つけて融資ノルマを達成する必要に迫られるものです。金融機関は、多額の融資をした金利が利益の一部になります。

ところが融資対象先の一つである住宅ローンの金利は、空前の低金利で利益がほぼ出ない状態です。さりとて、REIT等その他の金融商品の営業をしても利益は少ないです。

結果的に、億単位の融資をしてノルマを一気に達成できる可能性がある不動産投資案件に注力することになります。

私たちのような不動産業者は、特定の金融機関と協力関係を構築するのが通例なため、不動産投資をする場合に新規の金融機関から融資を受けることはまずありません(※意図的に金融機関を新規開拓する場合や、経営が悪化して既存の金融機関から借り入れできない場合等、特段の事情があれば別です)。

 

不動産投資をする個人向け融資のリスク

サラリーマン向け融資の場合、年収や勤続年数、勤務先情報のような一般的な信用情報に基づく審査が厳しいです。以前のように終身雇用が常識ではありません。重い病気が発覚した場合や年齢的な面等、様々な要因で職を失ったり収入が減少する可能性があります。

現在本人が高収入だとしても、サラリーマンの収入は勤務先からの給与所得であるため、病気やリストラに限らず、勤務先の倒産等の理由で所得が一気に減る可能性があります。

そもそもいつ退職しても良いようにと、副業的に不動産投資を始める方が多いです。

大中小問わずブラック企業がとても多いこともあり、勤務先に縛られない人生設計が推奨される時代になりました。

経済的自由を得たいサラリーマンが、今後ますます増加する可能性が高いです。

そうすると、金融機関から見て不定期に信用力がなくなるリスクが高いことになります。

 

サラリーマンが不動産投資をする場合であっても、サラリーマンの属性よりも、投資物件そのものの担保評価(事業収支等)が重要なことだと思われる方も多いと思います。

金融機関がなぜサラリーマンの属性にこだわりを持つのかについての記事です。

第47回 銀行でいずれはサラリーマンを辞めるつもりか?と聞かれたら、馬鹿正直に答えるべき?

銀行はなぜサラリーマンの「属性」にこだわるのか?

銀行は、物件に対して融資する訳ではございません。

もちろん『属性』そのものに対して融資する訳でもございません。

銀行は、なによりもまず『人』に対して融資するものなのです。

「この『人』にお金を貸していいだろうか?」

「この『人』のこの事業に、融資して大丈夫だろうか?」

「この事業のこの事業収支計画で、ちゃんと貸したお金、銀行に返ってくるだろうか?」

「この『人』は、自分自身でしっかり事業を営み、どんなことがあっても、ちゃんと約定どおりお金をご返済される『人』なんだろうか?」

という具合にです。

ですから銀行は、どんな融資であれ、大切なお金をお貸しする以上、その『人』をより深く知る手段の1つとして、みなさんの『属性』にこだわるのです。

加えて、サラリーマンが不動産投資をするリスクは高まっていると思います。

一般的に、サラリーマンは一棟賃貸マンションやアパート(賃貸住宅)を投資対象として検討します。そのため物件購入の競争は激しくなります。したがって現在の不動産価格は決して安くありません。データ的に賃貸住宅の空室率は高いです。中古の一棟賃貸住宅を購入した場合の将来的な大規模修繕費のリスクも高いです。大震災のリスクもあります。

賃貸住宅へ不動産投資をする問題については、以前以下の記事で記載した通りです。

大余り、空室率大の賃貸住宅への危うい不動産投資

ずっと言われ続けていることですが、賃貸住宅は供給過多です。これから賃貸住宅経営を始めても困難な航海になる方がほとんどだと思います。

これらの融資リスクを総合的に鑑み、サラリーマンに対して金融機関が数億円以上の融資をすることは、いくらマイナス金利下だとしてもリスクが高いと判断するのが妥当です。

仮に審査が通っても金利は高くなるでしょう。現在のバブル的市況において、高い金利で融資を受けて不動産投資が成功することは困難です。

以上の状況より、サラリーマン向けに、場合によっては億単位となる不動産融資を容易にできるわけではないことが分かります。

 

個人が法人を設立して不動産投資をする場合の融資

サラリーマンが法人を設立して融資を受ける場合であっても、同様に制限が厳しいです。設立する法人が、高額な融資や節税目的のペーパー会社的な場合であればなおさらです。債務者は法人ですが、実質的な債務者は不動産投資をする本人(個人)ですから、通常の場合は実質的な経営権を有する本人の信用情報に基づき融資審査を行い、万が一に備えた連帯保証を本人に課すことになるからです。

*上記の記事によると、個人が設立した法人を「不動産管理会社」と記載していますが、一般的な建物管理会社と混同する方もおられると思いますので、以下「資産管理法人」として記載します。

資産管理法人の代表者は、不動産投資をする本人の場合だけではなく、不動産投資の実務を行わない配偶者の場合もあります。その理由としては、不動産投資をする本人が勤務先に副業をしていることを隠す目的が代表的です。

さすがに配偶者に内緒で、資産管理法人の代表者を配偶者にすることは稀だと思います。実質的に不動産投資の実務を行わない配偶者が、(配偶者の収入にもよりますが)多額の融資の連帯保証人を容易に引き受けることは少ないと推察します。

ですから融資条件になる連帯保証人は、代表者が配偶者であっても不動産投資をする本人に課すのが(よほどご理解のある配偶者でない限り)通例でしょう。

結局、実質的な債務者は不動産投資をする本人(個人)となります。

注1)実質的な経営権を有する本人が代表者の場合であっても、法定相続人(配偶者や、将来的な事業承継者)に対しても重ねて連帯保証を課す場合があります。

注2)配偶者が代表者の場合は、所得の大小によらず配偶者に対しても重ねて連帯保証を課す場合があります。

 

したがって、個人が設立した資産管理法人向け融資については、金融機関は個人向け融資に分類するのが自然だと思います。

※資産管理法人の代表者である配偶者が、不動産投資の実務を行う場合は別です。

 

で、今回は一体何がどう問題になったのか

今回の件は、上記の通り不動産業者向けだけでなくサラリーマン向け不動産融資の営業も厳しい状況下、多額の融資ノルマを課せられた金融機関担当者がサラリーマンが資産管理法人を設立して不動産融資を実行する際に、本来であれば個人向け融資と分類すべき案件を、企業向け融資に分類して融資を実行している懸念があることについて問題になったと拝察します。

それを記事では、

「にわか法人」懸念

と称し、

本来は個人向け融資と分類すべき管理会社を

“にわか法人”

として企業向け融資にすり替える

と記載してるようです。

企業向け融資にすり替えると、先に記載した個人向け融資特有の制限が少なくなり、購入する不動産の担保評価プロセスに依存するものの、個人の信用よりも不動産の担保評価に重きを置く審査が可能になるのでしょう。

結果的に、個人の信用面では期待する融資が実行できない場合であっても、企業向け融資にすり替えることで期待する融資を実行することが可能になります。

 

さすがに返済に苦しむことを予め承知の上で、多額の融資を受けるサラリーマンは極めて少ないと思います。

しかしその一歩手前の方々、すなわち多額の融資を受けるリスクは高いが、できればこの不動産投資を実現したいと思う方々にとっては、今回問題になった融資方法をありがたいことと受け止めている可能性があります。

融資ノルマで苦しむ金融機関の担当者と、その方々との利害関係が一致するためです。

 

しかし今回問題になった通り、いくらマイナス金利下であっても、本来であれば融資額に見合う信用力が伴わないにもかかわらず、企業向け融資にすり替えることで多額の融資を行うことが横行した場合、多額の借金を返済できない数多くの人と、不良債権(融資したお金が返済されない債権)を多数生み出す危険性があります。

ですから、今回の件のように金融機関内部で規制がかかるのは自然の流れです。

体質的に横並び的な金融機関ですので、他の地方銀行等でも内部で同様の融資手法が横行している可能性は否定できません。

他の地方銀行等の金融機関において同様の融資手法が横行していたとすれば、この記事で指摘された金融機関以外でも同様の規制が内部通達される可能性は大いにあります。

その結果、今後どうなるかについては推測の域を出ませんが、高収入の方が億単位の融資を受け続けて不動産投資事業を拡大したり、決して高収入ではない方が数千万円の融資を受けて不動産投資を開始することは容易ではなくなる可能性が高いです。

 

金融庁が不動産融資に警鐘

金融システム、金利変動や不動産集中にリスク 金融庁が警鐘

金融緩和の長期化で、不動産市場に資金が流れ込んでいる現状にも警戒感を示した。銀行の不動産業向け融資はほぼ一貫して伸びており、とくに個人向けのアパートローンに力を入れている地方銀行で増加が顕著だ。前年と比べた伸び率は2%程度と30%増えていた1980年代半ばに比べれば絶対水準は低いものの、重点的に監視を強める方針を示した。

今後、金融庁が金融機関に対して不動産融資規制をかける可能性はあります。

それは、サラリーマン向けに限らず、私たち不動産業者向けに対しても同様です。

その内容は平成初期のバブル時やリーマン・ショック時の規制とは異なると思いますが、現状よりも金融機関からの融資が受けにくくなると考えるのが妥当です。

ただし、これまでのご自身の賢明さと自制心の成果である潤沢なキャッシュと高い信用力に基づき健全な不動産投資事業を継続している不動産投資家さんは、金融機関から多額の融資が実行可能な限定優良顧客になってきますので、交渉次第では好条件の融資を受けることが可能になるでしょう。しかし、玉石混交の不動産投資セミナーや不動産営業でざわついている不動産投資市場では自分を賢い者とうぬぼれないようにしましょう。

 

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