多額の資金調達をしたWeWork創業者の描く不動産賃貸と取得事業内容
2022.8.26|コラム
かつて世の中を相当騒がせたWeWork創業者のアダム・ニューマン氏が、有名なウェブブラウザーの開発者で、現在は多額の資金を運用する投資家のマークアンドリーセン氏が率いる有名ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)から、多額の資金を調達する予定のようです。
ニューマン氏の描く事業内容はほとんど知られてはいなかったのですが、ここ数日で徐々に明らかになりつつあります。
a16zは、Flowが、人々が生活空間を購入する新しい方法を可能にするかもしれないと示唆しているが、それが賃貸モデルによるものかどうかは不明である。a16z共同創業者でゼネラル・パートナーのマーク・アンドリーセンは、ブログで次のように書いている。「住宅所有へのアクセスが限られていることが、不平等と不安の原動力であり続ける世界において、賃借人に安心感、コミュニティ、真の所有感を与えることは、我々の社会にとって変革の力を持つ」。
現在の不動産賃貸市場において一般的に締結されている賃貸借契約においては、仮に数十年間家賃を家主に支払ったとしても、借主は物件の所有権を取得することはできません。
あくまで推測ですが、ニューマン氏が描く事業は、将来的には住宅だけでなくオフィス等についてもスコープに入れているのかもしれません。不動産売買契約では、契約時に規定した回数を支払った時点で物件の所有権を取得することができるという、割賦払いによる売買契約が存在します。
その応用的な契約内容として、借主様(将来的な買主様)は、契約当初、割賦売買特約付の賃貸借契約でご入居します。将来的に(期限の定めは契約書上交わすと思われます)、住宅ローンを利用して、物件売買価格の残金を一括返済する仕組み作りは可能です。
すなわち、上記のアンドリーセン氏が触れている内容から拝察すると、これまで掛け捨てであった毎月の家賃の支払い分が売買代金の一部に充当され、高額な売買金額を支払った後に物件に住んでみた後、様々な問題(例:近隣住民とのトラブル、物件の瑕疵)が発生してしまう、といったリスクを大きく削減できる可能性があります。
何より、一般的な人にとって、賃貸住宅を契約することが、将来的にその物件を取得するための入口になるという、新しい不動産取得のためのアプローチになるかもしれません。
おそらく、日本国内外で類似の事業を行っておられる企業様等は存在すると思いますが、シェアオフィスという昔から存在していた市場に巨額の資金を投入して参入し、一時期とはいえ市場を席巻したWeWorkの創業者が考えることですから、大々的に上記の事業、あるいはそれに類する事業を開始するように思います。
東京都内の好立地にある100㎡を超える区分マンションの売買価格は、一般的に数億円します。仮にそれらの物件が賃貸市場に出てきた場合、賃貸借契約を締結して毎月数十万円から百万円超の家賃を毎月支払ったとしても、その物件の所有権を取得することはできません。借主側が負担する家賃は、住宅ローンで物件購入する際に金融機関から求められる常識的な頭金を越えてしまうことも珍しくないでしょう。
かつてニューマン氏は、WeWorkに関することで、大騒動を巻き起こしました。ソフトバンクの孫社長ですら、投資に失敗はつきものとはいえ桁違いの損失を被ったことで、珍しくWeWorkに投資したご自身の過ちを公の場で謝罪しておられます。
WeWork創業者でかつ大騒動の当事者であるニューマン氏ですから、よく言われるような起業家の事業失敗からのリターンマッチという前向きな目では見られていない状況ですが、彼の発想力に投資するベンチャーキャピタル等は世の中にはいないわけではないようですね。
ニューマン氏は、「比較的気軽に引っ越すことができることが利点の賃貸」Vs.「不動産購入」という、まるで解答がない問答のように繰り替えられてきたことについて、その常識に風穴を開けるビックビジネスを狙っているのでしょうかね。
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