優れた投資家とは? ウォーレン・バフェットの右腕&投資参謀 チャーリー・マンガー
2014.11.14|コラム
チャーリー・マンガー氏は、「ウォーレン・バフェットを世界一の投資家にした男」「非凡なる戦術家であり企業経営の魔術師」と呼ばれ、不動産にも精通し、バフェット氏の投資パートナーとして巨万の富を得ている投資家です。バフェット氏が師と認めるマンガー氏は、どうすれば優れた投資家になれると述べているでしょうか?
前回のウォーレン・バフェット氏の記事に引き続きマンガー氏を考察してみようと思います。
バフェット氏の右腕的存在、マンガー氏に関するウェブサイトからの引用です。
チャーリー・マンガー(Charlie Munger)ことチャールズ・トーマス・マンガー(Charles Thomas Munger、 1924年1月1日 – )は、ウォーレン・バフェットが会長を務める投資持株会社バークシャー・ハサウェイコーポレーションの副会長。投資家。
1924年、バフェットと同じくネブラスカ州オマハで生まれた。ミシガン大学で学び、アメリカ海軍に入隊した後にハーバード大学ロー・スクールに学部学生の学位なしで入学した。ロースクール卒業後1948年から1965年までTolles & Olson LLPに勤め、後にマンガー法律事務所を作り、不動産の弁護士として働いた。その後、投資のマネージメントに集中するために法律の実務をやめた。その法律的な知識は初期の不動産投資と後の株式投資において彼を有利に導いた。
現在数兆円の資産を保有するバフェット氏の言葉を引用させていただくと、バフェット氏の成功や名声は、チャーリー・マンガー氏とその妻故ナンシー・マンガー氏の内助の功によるものです。
多くの人がチャーリーを実業家、あるいは博愛主義者だと思っているが、私にとっては師である。そして、彼に教えられたことが、バークシャーの価値を高め、素晴らしい企業へと導く原動力となったことは明らかだ。
彼のことを語る際に、妻ナンシーの内助の功に触れないわけにはいかない。ふたりを身近に見てきた者として、チャーリーはナンシーの協力なしにこれほどの功績を成し遂げられなかったであろうと断言できる。
ジャネット・ロウ(増沢和美訳) 『投資参謀マンガー』パンローリング, 2005年, 7頁より
マンガー氏は世界有数の企業経営者とも懇意にしている知る人ぞ知る存在でしたが、バフェット氏ほど表舞台での言動が知られる存在ではありませんでした。
チャーリーの話は昔も今も変わりません。たった一つの違いは、今は人々が耳を傾けていることです。ナンシー・マンガー
(同『投資参謀マンガー』495頁より)
随分前にある人から次のような助言を受けたことを思い出しました。
「あなたの思う意見を、思う通りに発言し、それにより他人に影響を与えたいと思うならば、社会的影響力を持つ立場になりなさい。そうでないと、他人があなたの話に真剣に耳を傾けることはありません。」
その通りですね(苦笑)。
バフェット氏の限界を押し広げ成長させたマンガー氏
バフェット氏は、投資家としての自分の育ての親とも呼ばれる著名な故ベン・グレアム氏から、バーゲン価格での格安投資の教えを徹底されていましたが、格安投資ができない状況下では限界がありました。
マンガー氏は、その本質的な盲点をバフェット氏に訴え続け、投資の限界を押し広げたようです。
ベン・グレアムには、本質的な盲点がありました。高いプレミアムを支払ってでも買う価値のある企業があるという事実を、あまりにも軽視していたのです。
(同『投資参謀マンガー』171頁より)
チャーリーは、私がベン・グレアムの教えに従って、単なるバーゲン株買いに走らないよう、私を仕向けてくれました。チャーリーが与えてくれた影響は絶大です。グレアムの極端な考え方に染まった私を動かすには、相当大きな力が必要でした。それを成し遂げたのがチャーリーの心の力です。彼は私の限界を押し広げてくれたのです。(中略)「大体、もし私がベンの意見だけしか受け入れないままでいたら、これほどの資産は決して築くことができなかったでしょう。」
(同『投資参謀マンガー』173頁より)
マンガーによれば、バフェットはグランドセントラル駅にほど近いトゥーイーディ・ブラウンの事務所で「若くて貧乏だったころはよくブラブラしていた」という。バフェットは一九九六年に自身のパートナーシップをたたんだ。株式市場は過熱状態にあり、もはや割安株を見つけることはできないというのが、その理由であった。
(同『投資参謀マンガー』345頁より)
投資後にテコ入れをしなくても十分な果実(利益)を享受出来る投資対象、すなわち「目に見える価値」を理解できなければ、怖くて投資できないということは多々あります。そのリスクを恐れ、常にバーゲン価格での投資対象を探すことは決して悪いことではないと思います。
ただし、さらに投資を続けて成長させたいのであれば、「目に見える価値」だけでなく、成長性、すなわち「目に見えない価値」に投資する必要が出てくることになります。
今なお「史上最高齢にして最強を誇る投資家チーム」
相乗効果を生み出すような信頼の置けるパートナーの存在は大切ですね。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツとポール・アレンや、ソニーの井深大と盛田昭夫、あるいはバフェットの師であったベン・グレアムと彼のパートナーであるジェリー・ニューマンなどの例に見られるように、彼らの関係には魔法とでも形容すべき相乗効果があった。
(同『投資参謀マンガー』29頁より)
最近の投資事例として、マンガー氏の助言によりバフェット氏が巨額の利益を得ていることに関する記事を見てみることにしましょう。
「2025年までにトヨタの牙城を崩す」天才投資家バフェットが肩入れする中国企業の野望
おりしも、中国政府は国産自動車メーカーの育成に本腰を上げて取り組み始めた矢先であり、電気自動車やハイブリッド車の研究開発には資金面での援助を惜しまないことになった。こうした中国政府の産業育成政策はBYDにとって願ってもない追い風となっている。2008年には、BYDは満を持してF3DMと呼ばれるセダンを国内で売り出した。
そうした積極的な研究開発と市場参入の動きに着目したマンガー氏はバフェット氏を説得し、この新興自動車メーカーに対する本格的な投資を促したのである。自らも納得したため、バフェット氏はBYDの25%の株式を取得しようとしたが、交渉の結果10%で折り合った模様である。
しかし、この投資によりバフェット氏の会社は投資後わずか1年で8億ドルもの利益を稼ぎ出すことができた。
この記事内で「史上最高齢にして最強を誇る投資家チーム」と呼ばれているバフェット氏とマンガー氏が投資を決断した投資先は、一体どうなっているでしょうか?
中国BYD、ブリュッセルのEVタクシー入札で勝利
投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイが出資している中国の自動車メーカー比亜迪(BYD )は、ブリュッセルで初めて実施された無公害タクシーの購入入札で仏ルノーや日産自動車を相手に大きな勝利を収めた。BYDの16日の発表資料によると、EVタクシー車50台の入札でBYDの「e6」モデル34台が購入された。ブリュッセルの大手タクシー会社、タクシー・ブルーのルイジ・マロッコ最高経営責任者(CEO)は電話取材に対し、「本音を言えば中国車ではなく欧州メーカーを選びたかった」と説明。ただ、「サイズや乗り心地、航続可能距離を考えるとBYDは明らかに日産やルノーより優れていた」と述べた。
ダイムラー と中国 BYD の新ブランド、デンツァ …市販EV生産開始
ドイツの自動車大手のダイムラーと、中国BYD(比亜迪)が立ち上げた新ブランド、「デンツァ」(DENZA)は9月9日、中国専用EVの『デンツァ』の生産を開始した。
デンツァは同ブランド初の市販EVとして、2014年4月、北京モーターショー14で発表。ダイムラーとBYDは2010年3月、技術提携を発表。2010年5月には、中国でEVを共同開発することを目的に、合弁会社の「深センBYDダイムラー・ニューテクノロジー社」を設立した。親会社BYDは95年設立。パソコンなどに使う充電式の2次電池メーカーだ。携帯電話用リチウムイオン電池のシェアでは世界一を競う。
03年に西安の国営自動車会社を買収し、自動車産業に参入。07年の売り上げは212億元(約3100億円)と、5年で5倍の規模に成長していた。
昨年には、米国の著名な投資家ウォーレン・バフェットが2億3000万ドル(約230億円)を投じ、10%の株主になった。ただ、最近までロゴマークが独BMWとそっくりで、使用中止を求められていた会社でもある。
そのBYDオートが昨年末、家庭用電源から充電できるプラグインハイブリッド車を世界に先駆けて売り出した。
いかにも中国らしい問題を抱えてはいるものの、巨大な中国市場をベースとして、欧州市場等を含めて世界有数の自動車メーカーになるための階段を着実に上っていますね。
マンガー氏が不動産投資で得たこととは?
マンガー氏は、初期に不動産投資(開発)をして十分な蓄財をしています。その資金を手に株式投資の世界へ進出しました。
チャーリーは最初事業会社に興味を持ったが、製造業で儲けるためには多くの危険が伴うことに気づいた。その一方、1960年代のロサンゼルスでは、毎週1000人の割合で人口が流入していた。南カリフォルニアは爆発的な成長を続け、また土地はあり余っていることから、不動産デベロッパーは儲かる仕事であると、マンガーは見抜いていたのである。
(同『投資参謀マンガー』141頁より)
「すべてが終わったとき、不動産関係で得た収入140万ドルに達していた」とマンガーは言う。「当時としては大金です。(中略)全部で五つのプロジェクトを手掛けたけれど、そこでやめた。お金を借り続けることが嫌だったからね。それに、こまごまとした仕事をこなしたり重大な問題を解決したりするのは、それ専業でやっても大変だけど、副業でやるにはほとんど神業が必要なんだよ」
(同『投資参謀マンガー』153頁より)
副業でサラリーマン大家さんを目指す方にとっては、あまり嬉しくない金言かもしれません。
どうすれば優れた投資家になれるか?
マンガー氏は、第一に自分自身の性格を理解しなければならないと言っています。
ゲームに参加するのであれば、各人が、自身の限界効用を熟慮して、また自身の性格も考慮に入れた方法をとらなければいけません。損失によって惨めな気持ちになってしまう人は — そして現実に、投資に損失は付き物ですが — 全人生を通じて保守的な投資手法をとった方が賢明でしょう。つまり、自分の性格と能力に見合った投資戦略を採用するということです。だれにでも適合するような投資戦略というものは存在しないと考えています。
(同『投資参謀マンガー』475頁より)
自分自身に対する知的な謙虚さを持つことが大切のようですね。情報収集含めて、学ぶことを重視することをさまざまな場面でマンガー氏は勧めていますが、その学び方についても助言しています。
「なぜその情報が必要なのか。目的意識を持たなければなりません。年次報告書を読むのであれば、フランシス・ベーコンが提唱した科学の方法をとっていてはダメ。終わりのないデータを単に収集して、後からその意味を理解しようとすることになるからね。現実に関する概念を身につけてから始めなければいけない。そして、今、自分の見ているものが、すでに証明された基本的概念に適合するかどうかを、見極めなければならないのです」
(同『投資参謀マンガー』476頁より)
リスク分析についても助言しています。
「信じられないほど業績の素晴らしい企業がたくさんあるでしょう。問題は、いつまでその状態が続くかということです。それに対する答えを見つけるには、私が知る限り、たった一つだけ方法があります。それは、そうした業績を可能にしている原因について考え、それらを阻害し得る条件を洗い出すことです」
(同『投資参謀マンガー』477頁より)
不動産投資で成功する秘訣は私生活と物事をシンプルに
バフェット氏が率いるバークシャー ・ハサウェイの役員、ロナルド・オルソン氏は、マンガー氏の成功の秘訣とも思われることを述べています。
彼の公人としての生活の指針となっているのは、その私生活における価値観です。シンプルな生活をする。そして物事に正面からぶつかって、手を抜いたりはしないということです。
(同『投資参謀マンガー』467頁より)
マンガー氏は、自分を過大評価せず、知的な謙虚さにより知恵を獲得するするシンプルな生活を続けることが投資家として成功するために必要不可欠なことであると勧めているようです。
29 Brilliant Quotes From Charlie Munger, Warren Buffett’s Right-Hand Man
One of the greatest ways to avoid trouble is to keep it simple.
Wisdom acquisition is a moral duty. It’s not something you do just to advance in life. Wisdom acquisition is a moral duty.
(以下、意訳)ウォーレン・バフェトの右腕/チャーリーマンガーによる29の金言
トラブルを避ける最も偉大な方法の一つは、物事をシンプルに保つことである。
知恵を得ることは、道徳的な義務です。あなたが人生において進歩するためにすることは、他の何かでありません。知恵を得ることは、道徳的な義務です。
不動産投資においても、トラブルになる原因は、実は私たちの心の中に存在しているのかもしれませんね。マンガー氏やバフェット氏の言動から学べることは、意外とシンプルなことのように思いますが、それが意外と出来ないのでしょうね。。。
不動産投資以上に株式等金融市場の投資家が多数存在する中、なぜバフェット氏やマンガー氏が際立つ成功を収めているのでしょうか? 一時的に投資が成功しても、何らかのトラブルを抱えていつの間にか消えて行く投資家が後を絶たないというのに。
不動産投資で失敗する秘訣は?
マンガー氏は、より確実に人生の敗北者になりたい場合の心がけるべきことを4つ述べています。
無責任な行動をとれ。すべてを自分の経験から学び、他人の言葉に耳を傾けるな。三回失敗したらそれ以上努力するな。そして最後に、曖昧な考えに屈してしまえ
(同『投資参謀マンガー』474〜475頁より)
マンガー氏は、成功を収めた後にトラブルを抱える原因について、かつて巨額の損失を生み出したLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)破綻などを例にして解説しています。
「頭が良くて勤勉な人でも、仕事をしていくうちに、うぬぼれという名の落とし穴に落ちないとは限りません。彼らは概して、自分には人より優れた才能と手法があると過信し、自ら困難な航海に出て結局は座礁するのです」
(同『投資参謀マンガー』416頁より)
ねたみが十戒の中でも重要な、人間の特に顕著な性質であることを考えると、かなりの成功を収めたとき、私たちはねたみによる悪影響を回避しなければなりません。アリストテレスによれば、ねたみを避ける最良の方法は、手に入れる成功に見合うだけのものを生み出すことです。
(同『投資参謀マンガー』565頁より)
上には上の存在がいます。人間らしい生活の定義は人それぞれです。いかに自分らしいシンプルな生活を送るかが大切ですよね。
「もし賢くありたいなら」とマンガー。「自ら問い続けなければならないのは、『なぜ、なぜ、なぜ?』という質問だよ。そしてその答えを、深い理論構造と結び付けなければならない。そのためには、中心的な理論を身に付けておく必要がある。少し忍耐を要するけど、同時にそれはとても楽しい作業でもあるんだ」
(同『投資参謀マンガー』474頁より)
「どうしてその不動産に投資するべきなのか、なぜ不動産投資をするか?」
この問いを自らに行って明確な答えが出ない場合、信念なき投資とマンガー氏にお叱りをうけるかもしれませんね。
莫大な財産を作るために必要なこと
もし「あなたは莫大な財産を作りたいか?、なぜ莫大な財産を作りたいか?」という問いに明確な答えを出すことができる方は、
「人生で何回かしか訪れないビックチャンスをとらえ、即座に行動を起こして単純かつ理論的なことをやれば、莫大な財産を作れる可能性が高い」
(同『投資参謀マンガー』322頁より)
と述べるマンガー氏の以下の金言をご参考にしてください。大抵の方はマンガー氏の年齢に達するまでにはまだ時間が残されていると思うので、チャンスは一度は来るのではないでしょうか。
「明らかにビックチャンスだと認識できるようなチャンスは、複雑な変数を使った分析を好むような、好奇心旺盛で常に研究と注意を怠らない人のもとに訪れるものです。チャンスを手にしたら、あと必要なのはオッズが並外れて高いときに (過去の賢明さと忍耐力の結果である手持ちの資産を使って)進んで大きく賭けることができる気概だけです」
(同『投資参謀マンガー』322頁より)
あるとき一人の株主が、コカコーラのような良質な投資対象はもうないのだから、バークシャーのやり方では将来的に先細りになると不平を口にした。それに対してマンガーはこう答えた 「二、三の素晴らしい投資ができればあなたの家族全員が一生困らないくらい金持ちになれる、そんな投資が簡単にできるわけがないとは思いませんか? 」
(同『投資参謀マンガー』359頁より)