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高額な建物消費税額の行方は? GDP 2四半期連続のマイナス成長

2014.11.19|不動産投資ニュース

20141118

不動産投資の売買において、建物消費税額が数千万円になることは決して珍しいことではありません。消費税が5→8%になり、一段と高額になった建物消費税の高額さにため息をもらしてばかりです。景気悪化に伴い10%消費税への引き上げはどうなっていくのでしょうか。

 

18日夜、来年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げについては、デフレ脱却が危うくなるということで2017年4月に1年半先送りされる方針が発表されました。景気動向にかかわらず増税するとのことです。

ただし安倍首相は、リーマンショック級の金融危機、世界的な大経済緊縮状況、あるいは大変な天変地異が発生した場合、法律を改正し消費税率10%引き上げを再延期する可能性があることについても認めました。

安倍首相:衆院解散を表明、消費増税は1年半延期-12月選挙へ

11月19日(ブルームバーグ):安倍晋三首相は18日夜、記者会見し、2015年10月からの消費税再増税を17年4月まで1年半延期するとともに、21日に衆院を解散する方針を表明した。衆院選は12月2日公示-14日投開票となる見通し。

安倍首相は4月に8%に引き上げた消費税を再増税すると個人消費を押し下げ、デフレ脱却が「危うくなる」と指摘。その上で、「税制において大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきである」として、衆院を解散する考えを示した。増税を再延期する可能性は否定した。

安倍首相「天変地異あれば消費増税再延期も」

「リーマンショックとか、世界的な大経済緊縮状況、あるいは大変な天変地異(があれば)、国会で議論し法律を出してやります」(安倍首相)

消費税10%への引き上げを延期した原因は何だったのでしょうか?

内閣府は平成26年7-9月期の1次速報値を17日付で公表しました。

残念ながら、景気後退(リセッション)を示す結果となりました。

統計表一覧(2014年7-9月期 1次速報値)

結果の概要(PDF)

GDP、予想外の1.6%減 首相、消費増税延期表明へ
内閣府が17日発表した2014年7~9月期の国内総生産(GDP)の1次速報は、物価の変動の影響をのぞいた実質成長率が、前期(4~6月期)より0・4%減、この状況が1年続いた場合の年率換算では1・6%減となった。

GDP:実質年率1.6%減 7〜9月期
会見した甘利明経済再生担当相は景気低迷の背景について「デフレマインドが払拭(ふっしょく)しきれない中で増税のインパクトが想定より大きかった。消費者が生活防衛に走ったところがある」と説明した。

有識者からも厳しい意見が出ています。

GDPはショッキング、もはや消費増税議論すべきでない=本田参与
[東京 17日 ロイター] –  安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める本田悦朗・静岡県立大学教授は17日、内閣府が発表した7─9月期の国内総生産(GDP)速報値につい て「ショッキングだ。もはや、消費税増税を議論している場合ではない。日本経済を支えるため、経済対策に議論を集中すべき」とロイターに語った。

消費増税2年延期を、半年は追加緩和不要=中原元日銀委員
[東京 17日 ロイター] – 安倍晋三首相の経済ブレーンの1人である中原伸之・元日銀審議委員は17日、内閣府が発表した7─9月期の国内総生産(GDP)速報値について、「日銀や財務省など増税派の見通しがいかに外れるかが明らかになった」と指摘した。
今年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたことで、景気回復・デフレ脱却は仕切り直しになったとして、消費税率の10%への再増税は「1年半の延期では不十分。2年は延期が必要」との考えを示した。

 

エコノミストは本当にリセッション入りを予測できなかった?

GDPマイナス1.6%の衝撃! 消費増税ありきで封印された健全な危機感

厳密な定義があるわけではないが、一般的には2四半期連続のマイナス成長をもってリセッションとみなす。
ここで注目すべきは、大多数のエコノミストがリセッション入りを全く予測できず、消費増税引き上げを教条的に語ってきたことだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルのネット配信ニュースによれば「調査した18人のエコノミストの予想中央値は2.25%のプラス成長で、マイナス成長を予想したエコノミストは皆無だった」という。

ご優秀な各エコノミストがこれほどまでに予測を間違えるには、何らかの理由があるのでしょうか?

財務省への配慮と異怖がミスリード許す

景気の現状に対して健全な危機感を抱いていたエコノミストは他にもいたが、異様だったのは銀行や証券会社など金融機関系のシンクタンクに所属するエコノミストたちの的外れぶりだ。
彼らの多くが7-9月期のGDPのプラス成長を予測し、来年の消費増税延期などありえないと強調してきた。
そこには消費増10%に執念を見せた財務省への配慮、あるいは財務省への畏怖がにじみ出ている。財務省の存在がなんの影響もしていなかったとすれば、日本のエコノミストは本当に無能揃いということになる。

エコノミストといっても一般的には会社勤めですから、他と違った見解を主張して目立つようなことを発言するのがよいとは限らないのでしょう。ある意味大変そうですね。財務省の存在が今回影響を与えたかどうかは分かりませんが・・・。

 

ここで内閣府公表の上記「結果の概要(PDF)」をシンプルに見つめてみたいと思います。

・家計最終消費支出(実質):+0.3%に回復

天候不順の影響を超えて、一般的な消費マインドは増税直後より回復傾向にあるのではないでしょうか。

・民間住宅投資(実質):-6.7%(前期の-10.0%から回復途上)

消費税8%への引き上げの駆け込み需要の反動減が長期化していることもありますが、あちこちで大手ゼネコンが悲鳴を上げている通り、人手不足と資材不足によるコスト高騰化で建設が予定通り開始できないのがその原因と考えるのがシンプルだと思います。

・在庫投資:前期の+1.2%から-0.6%と大幅にダウン

4─6月期には増税直後の景気落ち込みで在庫が積み上がりプラスとなっていましたが、今期(7─9月期)は在庫調整を行ったことが影響したのかもしれません。

 

一般的な「消費者の肌感覚」「庶民感覚」を持っていて、不動産・建設業界で普通に仕事をしている人であれば「やはり実際のところ不景気でしょ。」と言う割合の方が多いように思います。

 

消費税の引き上げについての賛否両論

今月7日付ではこういった記事が報道されていました。

麻生財務相が消費税判断を明言、「予定通り上げたほうが良い」

政府・与党内でも慎重論が広がる再増税について、麻生財務相は、最終判断の焦点の7─9月期の経済情勢は天候要因で7月、8月は下振れしたことは間違いないとしながらも、「9月、10月、11月と数字は間違いなく上がっている」と指摘。さらに「来年度の景気が今年より悪くなるとみる人は、学者・経営者含めて、一人もいない」とし、「予定通り上げていったほうが良い」と述べた。
他方、足元の景気情勢を考えなければならないとの主張があることも承知しているとも語り、「最後の判断をするまでの間、いろいろ指標を集めてきちんと対応しなければならない」と語った。

一方、企業側の意見としては、消費税引き上げに多くの企業が反対しています。

ロイター企業調査:7割が増税環境「整わず」、延期は1年が最多
10%への消費税引き上げに対し、72%が実施できる経済環境にないと回答した。実施可能と回答した企業は28%で、「経済状況は悪化しているが、この程度で延期してはいつまでも実施できなくなる」(電機)といった声が目立つ。
実施できないと回答した企業からは、消費に対する厳しい認識が目立つ。
製造業からは「8%に増税後の国内消費の落ち込みがあまりに大きい」(電機)「想定以上に買い控えの影響が大きく出ている。しばらく様子を見た上で判断すべき」(機械)「駆け込み需要の反動減が深刻化しつつある。そもそも大きな需要の変動は体力低下を招いている」(輸送用機器)といった声が目立つ。
非製造業からも「所得の増加が実現していない上に、円安による輸入価格上昇が物価上昇を引き起こしており、一段と消費冷え込みが予想される」(小売)「地方はかなり悲惨な状況」(情報・通信)などの声がある。

ところが、17日付ではこのような状況でした。

消費再増税判断の4回目点検会合、予定通り実施に8人賛成・2人反対

賛成した有識者の多くは、消費税再増税の延期が必要なほど足元の景気が落ち込んでいるわけではないとの考えで、先送りで日本財政への信認が損なわれることに懸念を示した。西岡氏は、経済が循環的な回復局面にある中、財政再建先送りで良いことはないと主張。末澤氏は、今年4月の消費増税の影響は「想定よりもやや大きかった」としながらも、天候不順など「一時的な要因も多い」として「消費再増税の判断を左右するレベルではない」との認識を示した。

平野全銀協会長は「確かに消費税引き上げは景気への圧力が懸念されるが、今の日本の経済をみると景気回復へのモメンタムが途切れたわけではない。適切な経済対策をうつことで対応ができる状態だ」と指摘した。

「日本財政への信認が損なわれる」とはどういうことを意味するのでしょうか?

消費税率を5→8%に引き上げる前の記事ですが、ゴールドマン・サックス証券の馬場氏へのインタビュー記事を見てみることにしましょう。

消費増税見送れば海外勢は失望=GS証券・馬場氏

「消費税増税をなかなか決められないのもリスクだ。欧州の消費税にあたる付加価値税(VAT)は20%程度。5%から8%に何故引き上げられないのかと失望してしまうだろう」

「日本株に投資する海外投資家にとって、日本の財政問題は大きなテールリスクだ。日本には日銀の大量購入や、民間の貯蓄が国債に回っているという特異な構造があるとしても、リスクはリスク。特に長期投資家にとっては、このままでは何年か後に破綻してしまうかもしれないという日本の財政は大きな関心事。消費税増税は短期的には日本株の下押し材料になるかもしれないが、これができなければ、海外勢には失望されてしまうだろう」

今日、海外投資家が日本経済に与える影響は無視できない状況です。

GDPショックで株高シナリオ狂う、アベノミクスを問う選挙に

GDPは過去の数字であるものの、海外投資家にとって最もわかりやすい指標でもある。2四半期連続のGDPマイナス成長はテクニカル上、景気後退(リセッション)だ。8%への消費増税で4─6月期はマイナス成長でも、7─9月期には持ち直すという政府のシナリオもGDP1次速報の時点では崩れたことにる。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが14日公表したリポートによると、12日までの1週間に日本の株式ファンドから世界全体で38億ドルが流出した。2010年5月以来の大幅な流出になったという。

海外投資家は昨年、アベノミクスを好感し、日本株を約15兆6500億円(現物・先物合計)買い越した。日本企業の業績は回復しており、日本株高の裏付けがないわけではないが、アベノミクスが失敗に終わったと判断すれば、ポジションの縮小に動く可能性もある。

ところが消費税率を5→8%に引き上げる前と異なり、今のところ海外投資家は消費税の引き上げの見送りとアベノミクスを支援しているようです。

数ヶ月前時点では、海外投資家の中では消費税の増税延期は「日本売り」の声が目立っていたようですが。。。

〔特集:消費再増税〕海外勢に広がる先送り論、根強い腰折れ懸念 再延期なら大打撃

だが、9月以降、風向きが急速に変わり、マーケットでのムードは一変しつつある。10月中旬にかけ70社ほどの海外投資家を訪問したゴールドマン・サックス証券・エクイティデリバティブトレーディング部長の宇根尚秀氏は、消費増税に対する海外勢の見方が変化していたと指摘する。2週間前までは消費増税に対する賛否は五分五分だったが、足元では先送り論が優勢になりつつあるという。

世界の投資家、アベノミクス支持変えず-GDPショックでも
11月18日(ブルームバーグ):いわゆる「アベノミクス相場」の恩恵を受け、日本株投資家はこの2年間で総額1兆ドル (約117兆円)の富を得た。そして投資家の多くは安倍晋三首相が自分たちをさらに裕福にしてくれると期待している。(中略)世界の投資家は引き続き安倍首相とアベノミクスを支持している。円安を通じた企業業績と景気の回復を目指したアベノミクスの効果で、東証株価指数(TOPIX)のこの2年間の上昇率は89%と、先進国市場でトップ。

どうやら海外投資家にとっては、たっぷり儲けさせていただくことができるのがアベノミクスを支持する要因のようです。株高維持を支える海外投資家の意向に反して消費税の増税をしたら、アベノミクスが足下から崩壊するのでしょう。既に海外投資家からみた場合、あまりにも儲けさせてくれるアベノミクスを継続させることが第一で、「日本財政への信認」がどうのという状況ではないように思います。

かの有名なジョージ・ソロス氏も、先月末の日銀による追加金融緩和により数億ドルの利益を得ているようです。なお昨年の日銀による金融緩和時は、10億ドルの利益を得ていたとのことでした。

Soros Fund Profits Yet Again From Yen Short
Winners from weakening Yen
 (November 04, 2014)
Soros Fund Management profited hundreds of millions of dollars from betting against the Yen since Friday, according to a Wall Street Journal report by Greg Zuckerman based on information familiar with the matter.

Last year, George Soros made a large bet against the Yen amid the strong monetary easing supported by Prime Minister Shinzo Abe to fuel the Japanese economy. It had been reported that Soros Fund Management made $1 billion profit from shorting the Yen at the time.

このままの政策であれば海外投資家はますます喜びますが、日本の中小企業や一般個人にとっては苦しい状況が続くように思います。今や日本経済は、海外投資家の意向を無視できません。ついては、今後の消費税の引き上げについても不透明感があります。

 

高額な不動産に関しても一律の消費税率でいいの?

不動産投資業界において、今年4月以降引き上げれた消費税率(5→8%)による影響は大きいです。

私たちが仲介あるいは自社投資する対象の不動産ですら、建物消費税が千万円単位で上昇しています。ここからさらに消費税率がアップした場合、その高額すぎる建物消費税に対して採算を合わせていくことが困難になってきます。高額な不動産を購入するのだから致し方ないという見方もありますが、一律の消費税率で良いのかという議論の余地もあるのではないでしょうか。

今後、消費税は10%に引き上げられることは時間の問題でしょう。それにより高額な消費税を納付することで社会に貢献できるという大義はありますが、本音を言えば高額な不動産の消費税額に対する何らかの免税措置を検討していただきたいと切に願います。

 

気持ちはわかるけど、超えちゃ行けないラインを超えた脱税事件

企業経営者が、高額となった支払い済みの消費税を不正に還付を受けようとして逮捕された事件の例です。

「ほけんの窓口」前社長、消費税脱税容疑で聴取へ 東京地検 指南役も
関係者によると、今野前社長は平成22年、自身が運営する資産管理会社でマンションを購入した際、同社で架空の売り上げを計上するなどの手口で、マンションの建物部分にかかった同税約3千万円のうち約2千万円の不正還付を受けたとされる。
脱税を指南していたとされる男性は、ほかにも複数の企業経営者らに同様の不正還付を指南していたとみられる。

「ほけんの窓口グループ」前社長に有罪判決 消費税不正還付で
自身が設立した不動産会社の事業をめぐり、消費税計約2500万円の不正還付を受けたとして、消費税法違反などの罪に問われた来店型保険ショップ「ほけんの窓口グループ」前社長、今野則夫被告(58)の判決公判が21日、東京地裁で開かれた。野沢晃一裁判官は「積極的に国家から金員をだまし取る犯罪で悪質」などとして、今野被告に懲役2年、執行猶予3年、罰金320万円(求刑懲役2年、罰金350万円)を言い渡した。

高額所得者であった当人が、いわば国に対する詐欺を行った代償はあまりにも大きいものです。人間らしい人生を送ることを自ら放棄してしまいましたね。

なお「消費税還付スキーム」を公開しているウェブサイトが散見されますが、私たちは、公認会計士でも税理士でもありませんので良く分かりませんが、策士策に溺れるということにならないようご注意頂いた方がよいと思います。

 

不動産投資で失敗する人は税金を軽んじている方が結構います

所得税・消費税・相続税等、常に税金を念頭に置いて投資している立場としては、消費税を含めた各種税金を軽んじることは不動産投資で失敗する近道だと思っています。

それだけ各種税金は安くありません。仮に不動産の所有権を持っているとしても、「お上に年貢を献上するためにせっせ働きなさい!」と言われているような錯覚に陥ることがあります(苦笑)。

不動産投資と税金は切っても切れない関係で、後から追いかけてくるものです。レインボーカラーの税金と格闘する日々から解放されることは、残念ながら今後もありませんね。