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公務員が不動産投資や太陽光売電。副業・規則違反で問題にならないか確認

2015.1.21|コラム

20150120

公務員には、国家公務員法103条・地方公務員法38条により職務専念義務が課せられています。ついては、原則として副業が禁止されていると言われています。しかし、相続で不動産の所有者になってしまい、賃料収入を得てしまう場合もあります。中には、後ろめたい気持ちを持ちながら不動産投資をしている公務員もいるようです。

 

公務員に限らず、多くの日本人が不動産投資に走る大きなきっかけになった要因の一つは、世界的な大ベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)との出会いでしょう。この本を読んで人生を再検討した人は数多くいらっしゃるでしょう。

ロバート・キヨサキ「今こそお金に働いてもらいなさい」

51の言語に翻訳され、109カ国で出版されたこの本に登場する「貧乏父さん」とは、高学歴で安定した公職にありながら生涯お金で苦労した実父のことで、「金持ち父さん」とは、学歴はなくても大成功した実業家のことだ。給料に頼るのではなく、投資や起業によってお金を自分で作り出せるようになりなさいという「金持ち父さん」の教えに従い、キヨサキ氏は金や不動産に投資して資産を増やし、事業を立ち上げて成功し、今も投資家として精力的に活動している。

(中略)

5.なぜ優等生は元劣等生に雇われるのか?
――米国で13年4月に発売された著書『Why “A”Students Work for “C”Students and “B”Students work for the Government』は、親たちに向けて書いた本だそうですね。暗記や試験が得意な優等生(“A”students)は弁護士や会計士などの専門職に就き、学校の成績は悪くても創造力があり起業して成功する人(“C”students)に雇われ、平均点を取っていた人は役人になる。それはなぜなのか、実例を挙げながら問いかけています。

私も『金持ち父さん 貧乏父さん』を以前読みました。著者が主張していることの本質はとても的を得ている思います。そして、著者が主張していることに加えて、アメリカ人の親友が半分ジョークで言った話を思い出しました。

「アメリカでは自分に自信のない人は勉強して高学歴や資格取得を目指すけど、その人たちは有能なスポーツ選手やベンチャー企業家に頭を下げて、決して高くはない報酬で仕事をもらう立場になるんだよ。」

その親友は、アメリカの超一流大学卒業の学歴を持つ弁護士です。要するに「人生は学歴ではないよ!」と言いたかったのでしょう。

ただし、この手の自己啓発本に刺激を受け過ぎると、投資をしなければまるで敗北の人生になると思い込み、あせって投資を失敗してしまうことに繋がるので参考程度にした方が良いと思います。

 

公務員という社会的責任のある立場にあるにもかかわらず、本業そっちのけで不動産投資をして大問題になった事例があります。

年収7000万円はやりすぎ、公務員が不動産投資で失敗する時

兵庫県宝塚市の職員が、職場のパソコンから業務とは無関係の不動産投資に関連する1万5000通以上のメールを送り、不動産投資を行っていたとして、男性副 課長(51)が停職6カ月の懲戒処分となっていたことがわかった。神戸新聞によると、男性は全国に計10棟342戸のマンションを所有し、公務員としての 給与以外にも、年間7000万円以上の収入を得ていたのだという。

(中略)

30代職員は「私は上司がやっていたこともあって、その影響で不動産投資を始めたのですが、『みんなには言うなよ』と釘を刺されました」という。現在は2件の区分所有をしており、一棟モノの所有をうかがっているという。

(中略)

公務員には、大企業のエリートビジネスマンでも使えない共済組合からの借り入れという必殺技がある。前出の30代職員は「共済組合は担保をつける必要がない んですよ。だから、金融機関にも知られないし個人の与信はいっさい傷つきません。宝塚の職員がずっと辞めなかったのは、そういう理由もあったのではないで しょうか。私はまだ使っていませんけどね」と語った。これは、退職金が担保扱いされるという意味で物件の担保が要らないということのようだ。

私たちの税金により公務員の給与が支払われているのですから勤務時間中になんということをしているのだ! という民間の声が聞こえてきそうです。最近は、「私たちの税金により」というより「借金により」と言い換えた方がよいかもしれません。

公務員が退職金を担保扱いとする共済組合からの借り入れにより、別荘地や投資用ワンルームに高額な投資をして失敗してしまった例はかなりあるようです。

 

公務員に求められる役割と人材像は?

公務員は、私たちのような民間人とは異なることが、日本国憲法にしっかりと定められています。

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

公務員は「全体の奉仕者」です。すなわち、特定の利益のためではなく、国民全体の利益のために活動する必要があります。ましてや、自分だけの利益のために勤務時間を使って不動産投資をすることは、公務員に限らず民間人であっても問題があります。

国家公務員に求められる役割と人材像に関する記事(内閣官房のウェブサイトからの抜粋)です。

II 人事評価システムの見直しの基本的視点

2 国家公務員として求められる役割と人材像
国家公務員については、公務に従事する者であるということ自体から、以下のような基本的責務と行動規範が生じる。このため、新たな人事評価システムについて検討を行う場合には、これらを前提とする必要がある。

(1)国家公務員の基本的責務

国家公務員は、国民の負託を受けて公務に従事する「国民全体の奉仕者」であり、高い使命感と倫理観及び職務にふさわしい優れた能力をもって、国民全体のために職務に当たるべき基本的責務を有する。
このため、新たな人事評価システムについては、「国民全体の奉仕者」としての能力、適性、業績等を有する人材を育成し、評価するシステムであることが求められることとなる。

(2)国家公務員に求められる行動規範

国家公務員は、前述の基本的責務の下で公務に従事することから、以下のような行動規範が課せられることとなる。このため、新たな人事評価システムの仕組みや個々の評価項目・評価基準の検討に当たっては、これらの行動規範を反映するという視点が必要となる。
○国民の一部ではなく全体のために職務に当たるべきことを常に自覚し、公共の利益の増進を目指すという使命感の保持
○公権力の行使に携わる上で求められる国民の人権に対する配慮と公務の公正性・信頼性を支える廉潔性の確保
○職務遂行時における法令に基づく執行義務の完遂と適正手続の重視
○行政に対する国民のニーズと行政課題の動向に対応し、広い視野をもって中長期的観点から継続的に行う職務遂行

ちなみに、「廉潔(れんけつ)」とは、昨年の女子アナ採用問題で話題に上った「清廉潔」という言葉の一部でもありますが、一般的には「私欲がなく、心や行いが正しいこと」を言います。

 

では、地方公務員はどうでしょうか?東京都総務局人事部のウェブサイトからの抜粋です。

職員の服務

知事部局職員の懲戒処分について

懲戒処分とは、地方公務員法第29条の規定により、公務における規律と秩序を維持することを目的として、職員に法令等の違反、職務上の義務違反、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合などに行う処分です。

ところが同局からは、昨今の地方公務員は、自らの立場を理解し迅速な対応をとる力量が不足していると指摘されています。

危機にある地方公務員

これまで地方公務員は、非市場性を特色とした行政の枠の中で、いわば「独自の世界」を形成してきた。そこでは外部との競争は少なく、公務員同士においても競争よりはむしろ秩序が重んじられてきた。
行政の役割が明確であり、住民も行政に依存し、行政を信頼していた時代においては、こうした特色も「公務の特殊性」の名のもとに説明され、地方公務員自身もそれを当然として受け止めてきた感がある。
しかし今日では、まさにこの「閉鎖性」や「非競争性」が、住民の不信感を招くとともに、地方公務員の意識について、特に民間企業と比較しながら、次のような問題を浮き彫りにしてきたと言える。
第一に、危機意識が希薄なことである。「独自の世界」に閉じこもり、外部環境を正しく認識し、自らの立場を理解して迅速な対応をとる力量が不足している。
第二に、コスト意識が低いことである。いわゆる生産性の概念が希薄であり、費用対効果を踏まえて成果をとらえること、すなわち、最小の経費で最大の効果をあげねば、という問題意識が弱い。
第三に、切磋琢磨の意識が乏しいことである。競争の中でお互いを高めていく機会が少なく、結果的に専門性や政策構想力等、地方公務員の資質の向上が妨げられている。

市民のために日夜活動している地方公務員が多数いる一方、 上記の兵庫県宝塚市職員の不動産投資問題や、職場内で「他人には不動産投資をしていることは言うなよ」的な会話がなされていることがメディアを通じて報道されている実態を鑑みると、残念ながらモラルが欠如した公務員も相当数存在している可能性が高そうです。

 

ところが、不動産投資なんてする気持ちがなかったのに、相続で所有権を得た不動産(賃貸マンション一棟等)からの賃貸収入を得てしまい、結果的に不動産投資をしてしまっている人もいます。

 

国家公務員の不動産投資に関する規定

一般職の国家公務員に関する人事院規則では、どのように定められているのでしょうか。

人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について

第1項関係
1 「営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体」とは、商業、工業、金融業等利潤を得てこれを構成員に配分することを主目的とする企業体をいう。会社法(平成17年法律第86号)上の会社のほか、法律によって設立される法人等で、主として営利活動を営むものがこれに該当する。
2 「役員」とは、取締役、執行役、会計参与、監査役、業務を執行する社員、理事、監事、支配人、発起人及び清算人をいう。
3 「自ら営利企業を営むこと」(以下「自営」という。)とは、職員が自己の名義で商業、工業、金融業等を経営する場合をいう。なお、名義が他人であつても本人が営利企業を営むものと客観的に判断される場合もこれに該当する。
4 前項の場合における次の各号に掲げる事業の経営が当該各号に定める場合に該当するときは、当該事業の経営を自営に当たるものとして取り扱うものとする。
一 農業、牧畜、酪農、果樹栽培、養鶏等 大規模に経営され客観的に営利を主目的とすると判断される場合
二 不動産又は駐車場の賃貸 次のいずれかに該当する場合
(1)不動産の賃貸が次のいずれかに該当する場合
イ 独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。
ロ 独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。
ハ 土地の賃貸については、賃貸契約の件数が10件以上であること。
ニ 賃貸に係る不動産が劇場、映画館、ゴルフ練習場等の娯楽集会、遊技等のための設備を設けたものであること。
ホ 賃貸に係る建物が旅館、ホテル等特定の業務の用に供するものであること。
(2)駐車場の賃貸が次のいずれかに該当する場合
イ 建築物である駐車場又は機械設備を設けた駐車場であること。
ロ 駐車台数が10台以上であること。
(3)不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合
(4)(1)又は(2)に掲げる不動産等の賃貸と同様の事情にあると認められる場合

賃貸アパートであれマンションであれ、合計10室以上保有している公務員の不動産投資事業は自営にあたるようです。あるいは、賃貸収入が年額500万円以上あっても自営にあたってしまいます。

よくある相続税対策で、10室くらいのアパート・マンション一棟を建築する場合があります。もし相続人が公務員であれば、単独で相続してしまいますと自営にあたってしまいそうですね。

ついては、自営→副業にあたり、規則違反に該当してしまう危険性があると思います。

 

自営→副業とみなされない不動産投資の方法は?

上記の範囲に該当しない不動産投資事業だとしても、国家公務員にとって自営に該当する場合もあるようです。

ここで専門家のご意見を拝読させていただきます。

公務員の方が相続した土地や建物を人に貸して賃料収入を得るのは副業にあたるのか?

一定規模以下の不動産賃貸なら公務員の方でも人事院の承認等なくても行えると考えられます。

しかし、人事院規則14-8の規定は該当する不動産又は駐車場の賃貸は副業に当たるとするもので、該当しないからといって必ずしも副業に当たらないと言っているわけではないことにご注意ください。

また、この規定は国家公務員に関する規定ですので、地方公務員の方にも必ずしも当てはまるとは言えません。地方公務員の場合は各自治体によって独自に規則が定められている場合がありますので注意が必要です。

これから不動産の賃貸借を行って行こうと思っていらっしゃるなら規模の大小に関わらず承認等が必要な場合がどうかは確認されることをお勧めします。

「全体の奉仕者」という日本国憲法に反しないかどうか、個別具体的な審査が求められるように思います。ただし、現実的にどこまで厳密な審査が行われるのかは判りかねます。

あいつぐ公務員のバイト問題――「公務員の副業」はなぜダメなのか?
「公務員は法律で副業を禁止されています(地方公務員法38条・国家公務員法104条)。
その理由は、主に下記のような点です。
(1)他の仕事をすることで、肉体的や精神的に本業に集中できず、仕事に支障が出ることを防ぐため(職務専念)
(2)本業の秘密を、副業の際に利用、流出されないため(秘密保持)
(3)世間的にイメージの良くない副業につくことにより、勤務先の社会的な信用を損なわせないため(信用確保)」

―― 一見、会社勤めの人と、変わらないように思えるが?

「そうですね。副業によって問題が起きるケースがあるのは公務員以外でも同じで、一般のサラリーマンも就業規則で副業を禁止されていることが多いです。ただし、公務員の副業はさらに厳格に規制されているといえます。
その理由は、公務員が国民全体の奉仕者として、職務の公正や中立性を要求されているからです。特定の業種に利益を与えていると疑われるのは大きなマイナスです。国民に対して義務の履行を求める立場として、信頼を失うわけにはいきません」

公務員は「全体の奉仕者」ではありますが、絶対に不動産投資をしてはいけないとは規定されてはいないようです。

ただし、本業(公務員としての職務)そっちのけの不動産投資は論外です。

また、本業に影響がない(と思っている)不動産投資についても、株式等と同様に単なる投資であって副業ではないとは一概には言えないように思います。

相続等の理由で不動産投資を行うということであれば、面倒かもしれませんが、各種規定の範囲であっても後々トラブルにならないよう、しかるべき手続きを踏んだ上で、正々堂々と不動産投資をしていただくのが正しい道でしょう。

 

一般職の国家公務員であれば次の申請書を提出して、不動産投資を行う承認を得る方法があるようです。

 自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)

ただし、地方公務員の方が同様であるとは言えないと思います。地方自治体ごとに独自の規定があると思いますので、各規定に従い不動産投資を行う承認を得るのが安全・安心ですね。

自宅に設置した太陽光設備も自営に該当する場合あり

本格的に太陽光ビジネスを開始するつもりがなくても、自営とみなされ規則違反とみなされてしまう場合がありそうです。

事実、2014年には上記「人事院規則14-8」が改正されました。

「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」の一部改正の概要(PDF)

(1) 一定規模以上の太陽光電気の販売を承認が必要な自営兼業として明確化
一般職の国家公務員が10kW 以上の発電出力を有する太陽光発電設備を設けて太陽光電気(太陽光を変換した電気をいう。以下同じ。)の販売を行う場合を、人事院(その委任を受けた者を含む。)の承認を必要とする自営兼業に該当するものと明記する。

例えば、次のような10kW 以上の発電出力を有する住宅用の太陽光発電システムを導入した場合が問題になります。

太陽光発電について考える(大和ハウス)

「固定価格買取制度」では、10kW以上搭載の場合と10kW未満搭載の場合では、売ることができる電気の量(買取区分)と買取期間が異なります。10kW未満搭載の場合は、買取期間は10年。太陽光で発電した電気を自宅で使って、余った分を売電する「余剰電力買取」が適用されます。太陽光とエネファームを併用するダブル発電では、買取価格が低く設定されています。
10kW以上搭載の場合は、買取期間は10kW未満の2倍の20年。発電した量を全量売電できる「全量買取」、または自宅で使って余った分を売電する「余剰電力買取」のどちらかを選択できます。これから太陽光発電搭載をお考えなら、「10kW以上」「全量買取」をご検討ください。

親が所有していた土地と、その土地上の10kW 以上の発電出力を有する太陽光設備を相続した場合も、自営としてみなされ問題になる場合がありえますね。

 

不動産投資についてもあてはまる話ですが、副業ではなく投資であるから問題にはならないというわけではないと思います。公務員としての立場と社会的責任の重さをしっかり自覚しておかないと、自営とみなされて思わぬ問題に発展する(規定違反で懲戒処分を受けてしまう)危険性があります。

後ろめたい気持ちを持ちながらではなく、しかるべき手続きをきちんと行った上で正々堂々と不動産等の投資事業を行いましょう。