ESTATE BOOKS

 

中小企業経営者・投資家の為の不動産情報サイト ESTATE BOOKS

世界的な株式市場の混乱でリスク増 不動産投資戦略の見直し

2015.9.1|不動産投資ニュース

20150901

不動産投資を検討する上で、今後も不動産価格が上昇するのかどうかについては特に気になる事だと思います。東京オリンピックまでは価格が上がるのかと言われれば、そうかなとも思う人もいるでしょう。ところが、昨今の世界的な株式市場の混乱でリスクが増し、既に不動産投資戦略の見直しが必要になってきている投資家も実は多いのではないでしょうか。

地球規模のお祭りであるオリンピックが東京で開催されるので、不動産価格が上がるように感じるのも分かります。

しかし今回、それは違うと指摘している記事をご紹介させていただくことにします。

予想したくない東京五輪後の「深刻な事態」 不動産バブル崩壊&「住宅余り」加速の懸念

不動産業者たちの合言葉は「東京五輪までは上がり続けますよ」。そう言われれば、誰もが「ああ、そうかな」と思ってしまいそうな響きがある。確かに、東京五輪は地球規模の祭典である。それが5年後の東京で開催されるのだから、不動産価格が上がらないわけがない、という漠然としたイメージを抱いてしまいがちだ。
例えば、ロンドンでは五輪開催(2012年)後も一部の不動産価格が上がり続けているという。さらにさかのぼり前回1964年の東京五輪後も、日本経済は高度成長を遂げた。その結果、「地価狂乱」という不動産価格の高騰も招いてしまった。
こうした過去をみても、「五輪開催=不動産価格上昇」というのは、いかにも受け入れやすいイメージだが、本当にそうなのだろうか。

イメージに惑わされてはいけませんね。

ただし、イメージ先行で不動産投資が行われているのも事実だと思います。

 

この記事の続きで筆者が述べている通り、東京に限らず日本全国で住宅が余っています。

予想したくない東京五輪後の「深刻な事態」 不動産バブル崩壊&「住宅余り」加速の懸念

衝撃的な数字がある。「千代田区で約36%、中央区で約28%」。これは東京都の都心における賃貸住宅の空室率である。現状でも、東京都内では住宅の「数」は十分に足りていることを如実に表している。
一方、東京都が出している予測によると、五輪が開催される20年に東京の人口はピークに達する。そのあとはじわじわ減り始めるばかりではなく、どんどん高齢化する。さらにその10年後の30年には、住宅への需要とシンクロする世帯数も減り始める。つまり、五輪を境にして、東京の住宅は供給過剰がますます顕在化するのである。
不動産価格と五輪は直接関係ない。ただ、「五輪によって東京が繁栄する」というイメージが先行しているにすぎない。もちろん、イメージはとても大切だ。株式や不動産は「将来値上がりするだろう」という読みの元に買われる。現在、地域限定でバブルが起こっているのは、そのイメージが先行しているからだと推定できる。

筆者がおっしゃる通り、東京五輪は5年後ですが5年後には終わりも迎えます。不動産ファンドのように、投資期間を5年で区切る投資家であれば、東京五輪までの間にビジネスライクに稼ぎたいという戦略が成り立つことになります。

ただし、一般的な投資家の場合は、東京五輪までの間に値上がり期待で不動産投資をするのは危険です。

約一年前に記載した以下の記事もご一読ください。

賃貸物件一棟への投資はもうダメ?空き家率が急上昇。2023年には空室率が21%になる?!
今、賃貸マンション、賃貸アパートを運用している方は、数年後の建物、街並をイメージしてみてください。また、人気物件と自分の物件の違いを考えてみてください。何もしなくても入居者が入る時代は終りました。これからは一棟物件を使った経営という感覚を持って不動産投資をしていく時代なのです。

 

商業施設はどうか?

商業系ビルやショッピングモールのようなものに投資すれば、東京五輪が開催されることにより値上がりが期待できるでしょうか? 東京五輪により世界各地から観光客や関係者が東京に溢れるので、商業施設は値上がりするイメージは強いです。

確かに東京五輪向けに、銀座等が再開発されています。

ブランド帝国モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)系不動産投資ファンドも参画。銀座で大規模再開発が進行中

銀座の中心部で大規模再開発が進行中です。6丁目中央通沿いでは、100m以上にもわたって銀座エリア最大級の商業施設が開発されようとしています。この再開発には、世界最大手のブランド帝国モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)が出資する不動産投資ファンドも参画しています。4丁目交差点の一角では、サッポロ銀座ビルの建替えも進行中です。

その土地値は確かに値上がりしているでしょう。ただし再開発エリアに登場している投資家は国内外の超大手企業であり、一般の投資家が参入できているわけではありません。

LVMHのような企業グループが投資したり出店するショッピングモールや百貨店は、今後ますます苦境に立たされるようです。海外の事例から学んでみましょう。

米ショッピングモール苦境 中核店相次ぎ撤退、増える空き店舗
「消費大国アメリカ」を象徴する大型ショッピングモールが米国で苦戦している。中核店舗として客を引き寄せてきた大手百貨店の撤退が相次いでおり、それがきっかけで活気がなくなっていく。


高級ブランドにも変革の波?リシュモンがで他ブランドに協力要請

各ブランド大手が左団扇で売上拡大を謳歌できない今、ショッピング・スタイルの変化に伴い売上テコ入れの狙いをオンラインに定めてもおかしくありません。

ネット通販の普及により、わざわざ時間と お金をかけてショッピングモールや百貨店に足をは運ばない傾向が強くなっているようです。ショッピングモールや百貨店で購入する人がいなくなるわけではありませんが、世界規模で経済状況が決して良いとは言えない中、ブランド系企業の売り上げが右肩上がりになるとは考え難い状況です。

ですから、東京五輪による値上がり期待で商業施設へ投資することができるのは、短期で国内外の多額な投資マネーを運用する機関投資家やJ-REITのような投資家でしょう。

また、そういった投資家に投資マネーを投下出来るだけの資金力を持つ投資家は、やはり短期的に資金運用をせざるをえない地方銀行や各種年金等でしょう。

こういった投資家が、東京五輪後のことをどこまで慎重に検討した上で投資しているかについては分かりません。ただし、最近の世界的な株式市場の混乱でリスクが増加していることから、不動産投資条件等戦略の見直しに迫られる状況のようです。

クリサス:引き続き買収機会探る、日本国内の商業施設-市場混乱でも

日本の商業施設に投資するシンガポール上場不動産投資信託(REIT)、クリサス・リテール・トラスト(CRT)はこのところの世界的な市場の混乱でリスクが増加したため、買収戦略と取得条件の見直しを迫られていることを明らかにした。 CRTのスポンサーであるクリサス・マーチャント・インターナショナルの共同創業者、ジェレミー・ヨング氏はインタビューで、「この2週間の出来事は、リスクが市場へと再び忍び寄りつつあるという警告だった」と発言。

 

オフィスビルやホテルはどうか?

ちなみにオフィスビルについては、東京五輪を前にして既に空室率の改善が鈍化していますので、値上がりを期待するのは困難な状況です。以前記載した記事をご覧ください。

 東京都心のオフィス空室率の改善はそろそろ限界か

大規模の新築ビルはもちろんですが、中規模の新築ビルでもそう易々と入居するテナントが決まる市況ではないと思います。今後はテナントの争奪戦が一層激化するでしょう。 一部大企業を除き、それほど好景気感は感じられません。東京オリンピックを控えているといっても、果たして実体を伴った右肩上がりの経済状況が続くのか疑問です。 私たちのところにも中小企業の保有する不動産の差押物件や、その一歩手前の苦境に直面した不動産情報が次々と入ってきています。

私たちが最近まで投資を検討していた商業系ビルについても、超大手証券会社がまとめて数フロアを借りています。アベノミクス効果もあって、現在最も勢いのあるビジネス分野の一つです。しかし、私たちはテナントの撤退リスクが大きいと分析している状況です。

 

なおホテルについては、確かに東京五輪時には不足するでしょう。しかしながら、一般的な不動産投資家が割安でホテル一棟に投資するのは困難です。また、「月に数百万円稼ぎました!」と最近メディアで報道されているAirbnbを活用することを念頭に不動産投資をする場合は、法的にグレーゾーンであることを認識しなければなりません(将来的に法改正がなされれば話は別です)。

 

東京五輪開催による値上げり期待や、円安相場を起因とする、海外投資家による高額な不動産投資と歩調を合わせず、住宅系であれ、商業系であれ、中長期的な目線で不動産投資をぜひご検討ください。そうすれば、短期的な目線ではあまり興味を持つことのなかった不動産が、意外と魅力的な不動産であることに気づく場合もありますよ。