高利回り物件・オーバーローンの落とし穴
2015.10.2|コラム
不動産投資をする上で、投資家が最も重視する条件の一つが「利回り」です。また多くの投資家が重視しているのが、自己資金無しで諸費用まで融資を受ける「オーバーローン」が可能かどうかです。その落とし穴について見てみることにしましょう。
表面利回りが一番低いのは、東京都で6%程度。一番高いのは北海道で9%となったため、北海道への投資が「お得」と思える。しかし、築後20年の表面利回りは東京が8%程度とあまり下がらないのに対して、北海道では9%から18%程度に大きく下がった。表面利回りが2倍になるということは、価格は半値以下になっていることを示している。
つまり、不動産投資は出口(売却)まで考えると話は違ってくるというわけだ。結果として、売却損益まで入れた総合利回りは、驚くことに47都道府県でどこでもほぼ同じような成績となった。
新築時に利回りが高いところは物件価格の下落率が大きく、下落率が大きいからこそ高利回りでしか取引されない。つまり不動産投資では、総合収支(インカム収支+キャピタル収支)を検証しないと意味がないことになるが、その情報はほとんど開示されていない。
どこの不動産に投資しても総合的な収益が同じならば、結局どれに投資するべきなのか分からなくなります。この記事の著者は、続けてそのことについても触れています。
不動産投資戦略は、投資家自身の属性と目的により異なる
ではここで、短絡的に「どこに投資しても同じだ」と言えるだろうか。答えは、表面利回りを求める人と求めない人に分かれることになる。高利回り物件を求める人は所得が低い人である。所得が多い人は不動産所得が増えても所得税で持って行かれるだけなので、重税の中では手取りは大して増えない。それを法人化しても、やや軽減されるだけである。所得が高い人は、低利回りでもいいから、資産が目減りしない投資を求める。それが相続税対策などの資産家投資の実態である。
つまり、その人の属性と目的によって投資は違ってくるのである。この2つの違いは、税金を味方につけるか否かで決まってくる。前者の所得が低い人はいずれ重税に苦しむ投資であり、後者の裕福な資産家は相続税を大幅に節税できる投資である。
不動産投資は税金の負担が本当に多額です。負担しなければならない税金の内訳は、購入時の登録免許税・不動産取得税、運用時の所得税・固定資産税、売却時の所得税などが挙げられます。加えて、負担すべき購入時の建物消費税が、(現在8%の税率において)数百万円から数千万円(場合によっては億円単位になります)になる場合もあります。そして、購入時の仲介手数料も加えると、投資をするには相当な諸費用を負担しなければなりません。
それでも不動産投資を開始したい方が後を絶たないのは、それ以上に不動産投資には大きな魅力があるからです。実際、自己資金なしで無理をしてでも不動産投資をしたい方は、相当数いるでしょう。
無理な不動産投資で陥るワナ
自己資金なしの方に対して、甘い言葉で不動産投資の道へ誘いこむ業者が存在します。
「オーバーローン」とは、物件を購入するだけでなく、各種税金や登記費用まで含めた諸経費までをすべて銀行からの融資で賄うというローンのこと。だから頭金が必要にならないのですが、その分、融資を受けられる人は限られてきます。小林さんは、「普通」のサラリーマンで、年収は平均年収並みか少し上回る程度、通常の預金以外に特別な資産がないと、受けるのは難しいといいます。
さて、オーバーローン、金融機関に正面から相談し融資を受ける形であればいいのですが、法に触れるような手段で金融機関を騙し、ローンを引くことが実際に不動産投資業界で起きているそうなのです。
不動産投資で失敗した例は千差万別ですが、大抵の場合は甘い見通しで不動産投資をしてしまったことに起因していると思います。
私たち日本人は昔から、「こっちの水は甘いぞ」という歌のフレーズを通じて、甘美な世界には気をつけろと教育されてきたはずです。
不動産投資を本業としている私たちが、あえて一言だけ助言するならば、
「狭い門から入りなさい」
ということでしょう。すなわち、多くの方が見向きもしない、あるいは困難だと思うような不動産投資にチャレンジしないと、これだけ数多い不動産投資家と低利回り物件で溢れている不動産投資市場で利益を得ることは非常に困難だということです。
度々記載しています通り、不動産投資は、不動産事業の経営者としての資質が問われます。経営者としての資質がなければ、ビギナーズラック的に投機がうまくいったとしても、いつの間にか取り返しのつかない大変な事態に陥り、結果的に不動産投資を開始する前よりもひどい生活になってしまうこともあります。
加えて、不動産投資の失敗例はなかなか世の中に書籍として出回りにくいものです。書籍を発行するための気力・体力・金銭力全てが奪われるほど、不動産投資に失敗した場合の負担は計り知れないものがあるからでしょう。結果的に、安易に不動産投資を開始して失敗する方が後を絶たないように思います。
「高利回り物件」「オーバーローン」そのものは否定しませんが、そういった甘美な勧誘で思わぬトラブルに巻き込まれることのないよう、十分お気を付けください。