「もったいない」の落とし穴。相続した不動産を使ったアパ・マン経営で借金苦!
2016.1.5|コラム
相続税対策のためにアパート・マンション経営に手を出して借金苦に陥る例については、このブログで度々記載してきました。2016年は、相続した不動産で不動産投資を始めて多額の借金で苦しんでいる事例の記事からスタートします。相続は生活に潤いを見せる反面、
「もったいない」。これは、親から不動産を相続した方からよく聞く言葉です。
「せっかく実家があるんだから活用しなきゃ」、そう考えるのも当然でしょう。
しかし、この考え方がいきすぎると、大きな問題を抱えることになります。有効利用できる実家ならば当然活用するべきですが、単に土地があるからというだけで、深く考えないと、耳障りのいい「土地活用」というわなにはまってしまいます。
埼玉県在住のご夫婦(Hさん)が湘南エリアの広い実家を相続で所有した後、人気の鎌倉にも近いことから「活用しないともったいない」と思い不動産投資を開始した事例です。
度々記載しています通り、不動産投資をすること自体を否定するものではありません。
しかし不動産投資家として求められるリスク管理等がきちんと行われていない場合、取り返しのつかない問題が発生してしまうものです。
今回の事例では、当初は驚く程順調に不動産投資事業が行われていたようです。
一体、不動産投資家として成功し続けるために何が足りなかったのでしょう?
記事を読み進めてみることにします。
想定外の大地震と、悪徳不動産会社の不当なマージン
マンション経営を始めて数年後、あの東日本大震災が起こりました。この地域は被害もさほど大きくなく、仮に津波がきても避難できる高台があるため、災害のリスクは通常の場所と変わりないのですが、海が近いということが理由で、徐々に人が出ていき、空室が増え始めたのです。
(中略)
不安に思った私は、すぐに現地を見に行きました。すると、掃除や敷地の草刈りもされていないうえ、空室の鍵はポストに入れっぱなしという、管理されているとはほど遠い状況だったのです。これでは、空室が埋まるわけがありません。
さらに、この会社は、Hさんに無断で賃料を下げ、事後報告するということまでしていました。賃貸経営に関する知識がなかったHさんは、それが問題であることにすら気づいていなかったのです。
このケースのように、賃貸経営をオーナーの自宅近くではなく、遠方で行う場合には、地元の不動産会社に管理を委託する場合がほとんどです。そして多くの場合、任せっきりになってしまい、現地の状況をいっさい把握していないという方が多いのです。もちろん、任せっきりにしていたオーナーにも責任があります。
この記事と同様の問題を抱えたお客様より、相談を受けたことがあります。
順調な不動産投資の為に各種業務をしてくれていた地元の不動産管理会社を、ドライに切り捨てることが出来ない方が多いと思います。しかしそうなると問題が先送りされるばかりではなく、どんどん不動産投資そのものの事業経営が成り立たない状況に陥るものです。
その先に向かう道は、後戻りできない破綻への一本道です。
さらに読み進めてみると、不動産投資を始めるにあたっての間違っていた点が指摘されています。
まず、このケースで間違いだったのは、60歳という年齢で3000万円という借金をしてしまったことです。この年での多額の借金は、経営がよほどうまくいかない限り、お子さんの代まで引き継がれる可能性が高いでしょう。お子さんがもう成人されているのであればマンション経営をすることについて話し合うことが必要でしたし、まだ子どもであったとしてもその子に及ぶ影響をよく考えるべきだったと思います。
もうひとつの間違いは、自宅から遠いところにマンションを建ててしまったことです。
多くの高齢者は、「自分はまだまだ大丈夫」と根拠なく思っているものです。けれど人間、年を取り体の機能が弱くなっていくことは自然の摂理。たとえ今は現場に行けたとしても、年齢が上がればそうはできないときがやってくる可能性があるわけです。そうなれば、必然的にマンション管理を管理会社に一任することになります。このケースの不動産会社はかなりの悪徳でしたが、ここまででなくても自分の目の届かないところで経営をするということのリスクを知っておくべきです。人に任せるということは、決して解決策ではないのです。
以前、相続税対策の為の不動産投資の問題点等に関して、以下の記事を書きました。
安易な気持ちで不動産投資を始めて、本当に大丈夫でしょうか?
不動産経営のノウハウを持たない人が多額の借金をして、長年にわたり事業経営をすることは危険すぎます。
相続税対策ではなく、今回の事例のように相続で大きめの不動産を所有した場合においても同様のことが言えます。
居住用賃貸物件一棟への投資に関する問題については、以下の記事もご参考までにご一読ください。
自らを過信して不慣れなことに独自で手を出す
不動産投資は意外と簡単に始めることができます。ビギナーズラック的に最初うまくいくと、その後のリスク管理等がついつい甘くなってしまうように思います。
不動産投資で失敗する原因は様々です。
より確実に人生の敗北者になりたい場合の心がけるべきことについて、以前以下の記事で触れました。
優れた投資家とは? ウォーレン・バフェットの右腕&投資参謀 チャーリー・マンガー
「頭が良くて勤勉な人でも、仕事をしていくうちに、うぬぼれという名の落とし穴に落ちないとは限りません。彼らは概して、自分には人より優れた才能と手法があると過信し、自ら困難な航海に出て結局は座礁するのです」(ジャネット・ロウ(増沢和美訳)『投資参謀マンガー』416頁より)
今回の事例のように、土地勘がない不動産を相続で「棚からぼたもち」的に取得した場合は、特に注意が必要です。不動産投資そのものに不慣れな上に、その不動産に潜む各種のリスクが相続前に発覚し難いためです。
ただで財産が入ると、節税のこともあり、自らを過信して不慣れな不動産投資に手を出したくなるものです。
結果的に後で複雑なトラブルに巻き込まれ、どうしようもない状況に陥る方を沢山見てきました。
以前も記載しましたが、不動産投資家として行うべき当たり前のことを当たり前のように着実に実行し続け、行ってはいけないことや不慣れな事をできる限り避け続けることが、不動産投資で成功し続ける最大の方法だと思います。
それが出来る自信がない場合は、相続等で所有した不動産をもとに不動産投資をスタートするのではなく、早めに換金し、(一律課せられる諸々の税金を支払えば自由に使うことができる)現金で子供等の教育資金や親族の豊かな生活等へ資金投下することを検討してみてはいかがでしょうか。
自らを過信して、不慣れなことに独自で手を出すことは、絶対に避けましょう!