中国に日本の高い品質管理や最新技術を提供する
2017.7.21|現場の話
弊社ビルのテナントでもあり、協力会社でもある株式会社TechCommunicationsが中心となり、十数名の中国在住の建設業関係の中国人経営者等をお連れして大和ハウス工業様の総合技術研究所(奈良県)等を視察してきました。
今回は、先日記載した以下のようなお客様が今後増加する可能性が高いため、試験的に実施することとなりました。
中国企業向の日本工場視察&不動産投資セミナー開催 「日本の技術・人材・不動産」への投資
世界第3位のスマホメーカーの中国・華為技術(ファーウェイ)が、千葉県船橋市の工場跡地に研究開発拠点を設けるという記事が公開されています。右肩上がりの成長を遂げる中国企業が、日本の優れた技術や人材に投資することが今後も増加する可能性が高いです。必然的に、日本の技術・人材はもちろんの事、工場・倉庫を購入することが予測されます。
私たちは成長過程にある中国企業向けに、日本工場視察&不動産投資セミナーを定期的に開催することになりました。
日本大手建設会社の工場視察&日本投資セミナー
株式会社コーヨー、アスリート株式会社、株式会社TechCommunicationsの三社は、2017年7月、中国企業経営者、建築関係者を集め、日本国内の建設会社の視察、不動産投資のセミナーを行います。
「日本の技術・人材・不動産」+「低コスト・高品質な大量生産」を組み合わせた事業の支援を通じて、日中間におけるビジネスマッチングの架け橋の一つになりたいと思っています。
レベルが高い中国人経営者
株式会社TechCommunications張社長には、弊社配布資料の中国語翻訳と、大和ハウス工業様の説明と日本への投資に関する私のスピーチの同時通訳もしていただきました。
張社長の日本在住期間は10年以上と長いです。そして工学博士でもあります。
*配布資料の中で記載した張社長のプロフィール
張 遠瑞(ZHANG YUANRUI)
株式会社Tech Communications代表取締役
代表取締役の張氏は、2004年に留学のために日本に来日。工学博士として、最新のロボット・人工知能に関連する分野の研究に従事しました。「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深センにおいて、物流センターの効率化のコンサルティングビジネスを実施中です。
張氏は、日本のビル専門業界新聞『週刊ビル経営』に、「未来の不動産経営:中国の技術が日本不動産を救う」特集で掲載されました。
↑↓株式会社TechCommunications張社長様(白いワイシャツの方)
張社長の左側の女性経営者様も工学博士のようです。彼女は午前・午後と視察の間、相当な数の質問をしていましたので、大和ハウス工業様の最先端技術と、長年培われたノウハウへの興味は相当なものだと感じました。
中国国内の経済が右肩上がりとはいえ、それにともなう競争も激しさを増しています。視察の企画当初、どういった方が、どのような思いで日本に来るのか未知な部分もありましたが、今回来られた皆様は、経営者としての真剣さが私たちにもはっきりと伝わってきました。
余談ですが、英語も流暢で、発音は欧米人と遜色ないレベルの方もいました。
午前中の視察:総合技術研究所
午前中は大和ハウス工業様の総合技術研究所を視察させていただきました。
同じ日にはインドからも視察団が来ていましたので、日本の技術、管理、教育のノウハウは世界中から注目されているということですね。
研究所の日本人女性スタッフは、流暢な中国語での案内をしてくださいましたが、インドからの視察団には英語で案内をするのでしょうね。素晴らしい。
見学中の写真撮影は原則禁止でしたので、実際の様子をお見せできないのが残念ですが、以下の通り見学コースの概要がウェブサイトに公開されています。
今回は、90分コースでしたが、時間の問題があり最後の記念館視察はパスすることになりました。テクノギャラリーの体験コースで盛り上がって時間を使ってしまいました。
私、個人的には、震度6強を体験できたり、耐震化に向けての様々な新技術が見れたのが良かったのですが、中国人経営者のみなさんは耐震化については、それほど強い興味を引いてはいないようでしたね。
地震よりも、デザイン、スマートハウスといった、最終的に購入する方々に対して目に見える効果が伝わりやすい技術に、中国人経営者さんは強い興味を引いていたようでした。ただし、中国では風力発電が主流になりつつあるのか、太陽光発電には興味薄の様子でした。
このように、育った環境や事業戦略が日本人と中国人では大きく異なるため、同じものを見ても着眼点が全く異なる場合があります。結果的に、日中のビジネス観や価値観のギャップを埋めることができずに、共同事業が成立しないことになります。
日本への投資セミナー
午前中は時間がオーバーするほど充実していたのですが、反面、午前の視察終了後に準備していた私たちのセミナーの時間がほとんどなくなってしまいました。将来的な日中での共同事業や日本の魅力的な投資内容の話を考えていたのですが、短時間で出来るだけ簡潔に伝えすることに注力しました。
共同事業を行う上で特に問題となるのが日中間のビジネス観や価値観のギャップを埋めることことだと思っているので、
・ギャップを埋めることが共同事業を成立する上での最重要の要素であること
・その架け橋として、張社長と私たちが共同でご支援すること
・日本企業の優れた新技術や品質管理ノウハウを提供可能であること
については力説させていただきました。
異国の地で初対面の日本人により語られる投資話について、聴く側が抵抗なく受け入れることは不可能です。ですから、かつて中国人のエンジニアと規模の大きい事業を行った実体験や、現在中国人経営者さんと懇意にさせてもらっている話を交え、大げさですが、
「私は中国人の方を愛しています」
とお伝えすること、そして隣人愛をベースに現在も将来も中国人の方々と共同事業や日本へ投資する支援を行うことを重視するスピーチにしました。雰囲気が和んだり、温かい笑顔に変わった様子をお見受けできましたので、心の壁が低くなるきっかけになったならば幸いです。
午後の視察の後に行われた質疑応答の時間に、日本の不動産を購入したいという雰囲気になったので、もう少し時間があれば、日本の不動産投資について前向きな議論ができる可能性が高いです。
午後の視察:環境配慮型工場のショールーム(奈良工場第一工場)
午後は、大和ハウス工業奈良工場にて、実際の生産現場を視察させていただきました。
こちらのショールーム内も、写真撮影は原則的に禁止でした。
午後の視察では、主に工場を建設・運営する上での最先端の省エネ技術を学ぶことができました。快適性と環境性を併せ持った工場を建築する為の、まさにモデルです。
こちらの工場ではこれから実際に建築して納品する住宅を目の前で視察できました。午前中の総合技術研究所での素晴らしさを、現場の方々がまさに具現化している姿には、視察団の方々だけでなく、日本人の私自身も感銘を受けました。
ここで働く人を含めて、このショールーム丸ごと中国に輸入したいと思っても決して不思議ではないです。実は別件で、中国市場で日本レベルの医療展開に興味を示している中国人の方から同じような要望を聞いています。
結局、どんなに素晴らしいハードウエア(工場や設備)を備えたとしても、それらを正確かつ丁寧に作業し続けることができる優秀なスタッフなしでは効果が期待しにくいということですね。
視察後の質疑応答時間で特に話題となったのが、日本で一戸建住宅を建てる場合の時間と費用についてでした。
視察団の一部の人は、中国の大手不動産デベロッパーの依頼で、今後大規模な街を開発する可能性があり、以前より中国に進出し、現地に拠点を持っている大和ハウス工業さんとの共同事業に興味のあるということが想像できます。
その延長の話で、日本の標準的な一戸建の建築費があまり高くない印象を持ったらしく、中国ではなく、日本での不動産投資に関する質問が続きました。日本の不動産価格がお手頃に感じたようです。今の日本は高額な不動産市況だと思う私は、少々意外な感じを受けました。
事前に知りえていた通り、今回の件で、高学歴な中国人経営者はもちろんですが、中国人経営者で「超」がつくほどのリッチな方々、今後リッチになりつつある方々が多数存在することを目の当たりにしました。
日中の共同事業に発展する可能性あり
中国の住宅市場では、マンションに加えて、日本のような一戸建ての市場が今後伸びそうです。もし日本の高い品質管理力と何十年にもわたる街づくりのノウハウを後ろ盾にできれば、都市部だけでなく、今後大きく変貌を遂げるであろう内陸部においても大変な競争力を持つことが出来るでしょう。
「品質管理に長けた日本の技術とノウハウ」
に加えて、
「低コスト&大量生産に長けた中国の技術とノウハウ」
を組み合わせると、中国国内市場において大きな事業に発展する可能性を感じました。その事業の成功のための手段として、日本に法人を設立したり、日本の工場等を丸ごと購入する中国人経営者が増えていく可能性もあります。
私たちとしては、今後も増加するであろう日本の人・物・技術へ投資する中国人経営者を支援していきたいと思います。
もともと、弊社アスリートは中国人との共同事業を主な目的として設立されました。弊社が、様々な中国人の方々とのお付き合いや共同事業を経て、長年積み上げてきたことが、今年になって少しずつではありますが具現化しているように思います。
早速、来月上旬にTechCommunications張社長と中国の上海等に出張を予定しています。このような出会いとビジネスの機会を与えてくれる張社長はじめ、関係者の皆様に感謝の気持ちを持って、少しでも今後の日中関係の友好的な発展の一助になるように頑張りたいと思います。
日中間の共同事業成功の鍵
中国人と共同事業を開始したものの、多くの企業がその事業から撤退しているのが現実です。
日中間の共同事業を継続して成功させるためには、張社長に代表されるような、日中間の商習慣や価値観のギャップを埋める人材が必須です。私自身もかつて、中国人のエンジニアと規模の大きい共同事業を行った際、今では良い経験となりましたが当時は相当な労力を要しました。
先日記載した以下の記事内でも、
弊社ビルのテナントである中国人経営者と共同取材『週刊ビル経営7月10日号』
かつての日本企業は、中国企業と協力関係を構築したとしても、品質面、制度面等の関係で、大半がビジネスを中座して撤退せざるをえませんでした。そういう背景もあり、どちらかといえば中国企業と協力することには否定的な方も多いです。その結果、日本の企業経営者の大半が、今は違う存在になりつつある中国人とのビジネスチャンスを放棄しているようです。そもそも最初から見下す姿勢を示す人が多いのも事実です。
ですから、今回の記事でも、コメント欄では
いずれにせよ、現状、立体駐車場付建物は非常に扱いにくい物件のひとつですが、日進月歩で技術・ノウハウが向上する中国企業と、品質管理に長けた日本企業の技術連携が、資産復活への転換の大きな解決策であると確信しています。その上では、日本人的な「品質を極めるものづくりの心」を持つ張遠瑞氏のような日本在住歴の長い秀逸な中国人の存在と、隣り合わせの関係にあり日進月歩の中国に敬意を表する日本人の「隣人愛」が不可欠です。
とコメントさせていただきました。
と述べさせていただきました。
言い換えると、工学博士という高い頭脳を持ち、日本人のビジネスや価値観にも精通している張社長のような存在が、日中間の共同事業主から貴重な存在としてますます注目されるということになります。
今回の視察が終わり、バスで帰る視察団に手を振っていた時、バスの中から笑顔で大きく手を振り返してくださったことは大きな一歩だと思います。
最後になりましたが、大和ハウス工業の東京在住のご担当者様等のお力添えにより、今回の視察を成功させることができました。現地日本人女性スタッフ様の流暢な中国語には、感銘を受けました! 猛暑日にもかかわらず、丁寧な説明をしていただいたリーダーの方はじめ、今回の視察を実現させていただいた大和ハウス工業の皆様には、心より厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
この記事が参考になったら、下のボタンクリックしていただけると幸いです